研究課題/領域番号 |
15K05206
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
丸山 健二 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (40240767)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 液体構造 / 中距離構造 / 液体半導体 / 構造相転移 |
研究実績の概要 |
液体カルコゲンの半導体-金属転移に伴う構造変化を明らかにするために以下の測定、解析を行った。 SPring-8の強力X線を利用し、液体Se80Te20の非弾性X線散乱測定を行った。半導体-金属転移が生じる1000℃までの温度領域に渡って良好なスペクトルを得ることができた。測定データを元に解析を行い音速を決定した。その結果、超音波により求められた音速に比べ5-10%速い「fast sound」であることを見出した。 液体Teの過冷却状態の中性子散乱について予備的測定を行った。その結果、融点より100K 程度低い温度まで測定できるめどがついている。この後は試料環境を改善し、より精度の高い測定を継続する。 以上および以前の測定結果を用いて液体カルコゲンの半導体-金属転移に伴う構造変化に関する解析を行った。とくにカルコゲンの分子鎖の環状構造からジグザグへの変化を特徴付ける構造情報を得ることに焦点を置いた。そのなかで、原子の空隙(void)のサイズ分布を用いた解析により構造変化の明らかな兆候を得ている。この結果は2016年度開催の国際会議にて発表する準備を進めている。 また、実験結果を基にして得られた構造モデルが電子状態の変化に対応していることを確かめるため、量子計算による電子状態の解析を進めている。今年度は、これまでの結晶に近い構造から実験結果に基づいた構造おもとにした計算に進めている。この結果、実験を基にした構造モデルにおいて電子状態の変化が生じていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうち、液体カルコゲンの非弾性散乱測定と過冷却Teの中性子散乱測定をある程度実施できている。中性子散乱測定は装置のトラブルおよび試料環境の改善のために得られているデータはやや劣っている。 このようなデータを元に液体カルコゲンの半導体-金属転移に伴う構造解析を進めることができた。とくに、液体Seについて、voidサイズ分布を元に解析したところ鎖構造の変化を示す指標を得ることができた。この結果について現在発表の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
液体カルコゲンのX線非弾性散乱、中性子散乱測定を進めていく。中性子散乱の試料環境については装置グループと協力して、測定精度を高めていく計画である。これにより、構造解析に必要な精度のデータを得て、これまでに測定みのデータを組み合わせ、信頼性の高い部分構造、中距離構造を明らかにしていく。 また、量子計算を基にした電子状態計算をすすめ、実験による構造モデルと合わせて総合的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に計画した実験のうち、中性子散乱実験について装置トラブル等により予定より測定回数が少なくなった。そのため関係の試料容器に関する物品、旅費が未使用になった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度において、前年度分の測定も合わせて行う予定であり、そのための物品、旅費に使用する。
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