現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の背景として、最近の無限大次元極限での剛体球ガラス系でのレプリカ液体論の発展がある (P. Charbonneau et. al. , Nature Communications 5, 3725 (2014))。吉野は特に、シアに対する応答の解析を理論に実装した (H. Yoshino and F. Zamponi, Phys. Rev. E 90, 022302 (2014), C Rainone, P Urbani, H Yoshino, F Zamponi, Phys. Rev. Lett 114 (1), 015701 (2015))。これらは非常に示唆的な研究であるが、剛体球系という非常に単純化された系で行われており、かつ現実とはかけ離れた無限大次元系で行われている。 本研究ではこれをさらに広範な、現実の有限次元におけるガラス・ジャミング系に理論を展開してゆくことを目指している。実際、下記のように昨年度は、回転自由度に関するガラス・ジャミング転移についてのレプリカ「スピン」液体論を構築することに成功した。これによってプラスチック・クリスタル、orientational glass と呼ばれる系を解析する道筋が開けてきた。この先さらに、並進自由度・回転自由度がともに重要な役割を果たす現実のガラス系の解析につながると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、次の2つ軸に沿って研究を推進する。 (1)「回転自由度のガラス・ジャミング転移」: (a)吉野は、より現実的なスピン成分数Nが有限の場合を考察するために、1/N展開に基づく近似理論を導出する。特に、昨年度の数値計算で見出されたパーコレーションについて詳しく検討する。(b)光元・吉野は、上記の有効スピン模型について有限温度の数値シミュレーションを行い、結晶状態、過冷却スピン液体状態、スピングラス転移(quenched randomnessなし)の有無について明らかにして行きたい。(c) また、現実のヤヌス粒子(パッチ・コロイド)などを念頭に、回転/並進自由度をともに持つ系にも理論・数値解析を広げることを試みる。 (2)「準安定ガラス状態追跡(GSF)法(glass state following method)の3次元系への拡張」:吉野は、レプリカ液体論に基づき、GSF法を3次元系に実装し、モデル系で解析を行う。無限大次元系での解析(C. Rainone, P. Urbani, H. Yoshino and F. Zamponi, PRL 114, 015701 (2015))を有限次元系に拡張するために、液体論における摂動の方法を応用する。具体的にコロイドやエマルジョンを念頭に、3次元剛体球系、ソフトポテンシャル系の圧縮・シアに対するガラス状態追跡のモデル計算を行う。特に、減圧による溶融、圧縮によるジャミング、シアによる降伏を調べる。
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