本年度はグラフ系を伝達する複数粒子の量子系の考察を中心に研究を進めた。粒子がボソンである場合、多粒子の状態はグロス=ピタエフスキ方程式でよく記述される音が知られている。これはキュービックな非線形をもつ、いわゆるシュレディンガーシュレディンガー方程式の代表的な例である。グラフ上の非線形種ディンガー方程式の研究は、いくつかの孤立した研究はあるものの、未だに基本的な部分で未知なことの多い新分野である。最も簡単なグラフ系として、一点に欠陥のあるリングを考え、その上での非線形シュレディンガー方程式の解を調べた。数学的にはこの欠陥点を記述する最も一般的な枠組みはU(2)群をなす4パラメータによるものである。ここではそのもっとも物理的に実現可能性のある3パラメータのサブセットである「フロップ=筒井デルタ型」天井ポテンシャルを考察した。
その結果、非線形項強度パラメータgの関数として固有状態を描いた場合、線形シュレディンガー方程式(g=0)にあっては縮退していた(1)実数関数で表される定常状態(2)複素数関数で表される進行波状態の二つがエネルギー的に分離して、発散系(g>0)側では進行波状態の方がエネルギーが高く、収束系(g<0)側では低くなること、さらに収束系側に臨海的なgの値があって、それ以下ではそれまでの基底状態である波動関数一定の状態から(3)一定地上にリプルを持つ新たな基底状態が分離する、ということが明らかになった。これによって、グラフ上の多体系における量子流束に、線形シュレディンガー方程式で表される一粒子系では見られない新たな様相があることが見出された。
|