研究課題/領域番号 |
15K05217
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
青木 健一郎 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (00251603)
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研究分担者 |
三井 隆久 慶應義塾大学, 医学部(日吉), 准教授 (20242026)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱揺らぎ / 光計測 / ブラウン運動 / 雑音 |
研究実績の概要 |
本研究課題にはいくつかの方向性があり,方向によって進展度合いは異なりますが,2016年度は概ね順調に,計画に沿って研究を遂行しました.あらゆる物質の有限温度における振る舞いの基本には,ブラウン運動を典型とした熱運動による揺らぎがあります.これは物理学はもちろん,自然科学にとどまらず,経済学等でも使われる重要な現象です.我々は独自の方法による実験測定と理論解析を用いて,実験物理学が専門の三井隆久氏(慶應医学部物理学教室)と理論専門の私がこのような揺らぎの共同研究を続けています.この方法を用いることにより,我々は既存の研究より桁違いに不要な雑音が少なく,既存研究よりはるかに高い精度の測定や,今までには見られていない現象の観測を行なってきています.2016年度には,原子のランダムウォークの直接観測と解析,そして金属表面の反射率揺らぎの測定と解析について2編の論文を査読付きの国際雑誌に発表し,学会で3回発表をしました.特に後者は初めての観測であり,仕組みも明らかではなく,これから重要な研究方向となると考えています.我々の用いている解析法は我々独自のものであり,発表した論文はいくつかの分野をまたぐ内容なので,発展も期待しています.さらに,関連した研究について,現在執筆中の論文が3篇あり,近日中に投稿する予定です. 私は以前より有限温度の物質の振る舞いを理解するためにφ4乗模型を用いてきました.この模型のダイナミックスについて今までよりも基本的な性質について,研究を行い,結果を2編の論文として査読付きの国際雑誌に発表しました.φ4乗模型は素粒子物理学,物性物理学から非平衡の物理学まで様々な状況で使われる理論であり,解明できた性質はその後の発展につながるものだと考えています.また,この研究結果はφ4乗模型だけではなく,他の理論にも適用できる一般的な性質であり,重要であると考えています.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三井隆久氏と共同研究を行なっている低雑音の測定においては,原子のランダムウォークを直接観測し,それを解析する研究,そして金属表面の反射の揺らぎを測定して解析することができました.これらについては既に査読付きの国際雑誌に発表しています.特に後者は我々の知る限り初めての測定であり,重要な意味を持つと考えています. 非平衡の物理学では,格子φ4乗理論の古典論を解析し,その周期解の一部について,その求め方,リャプノフ・スペクトル,安定性とそれらの関係を明らかにしました.また,その理論のカオス的な性質が温度にどのように変化するかを研究しました.これらも既に出版されました. 2016年度の重要な目標の1つは現在続けている研究ではっきりとした結果を得て,さらにそれを発表することでした.2016年度には査読付き国際雑誌に4篇出版し,学会でも3回発表しています.さらに,執筆中論文が3篇あり,近日中に発表する予定です.また,現在も一連の研究の発展としてさらなる重要な研究課題がいくつもあり,成果が期待されます.現時点での事業の目標は十分達成できたと考えています.
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今後の研究の推進方策 |
現在は概ね研究課題は順調に進展しており,計画通りにさらに研究を進めて行く予定です.低雑音の測定に関しては,原子の様々な熱的と量子力学的な揺らぎを測定し,解析していきます.さらに,表面,界面の熱揺らぎを原子レベルで測定し,解析していきます.これらについては,我々独自の方法で,過去に測定されていない振る舞いを調べていくので,独自性の高い研究成果を得られると考えています.また,雑音除去の方法は我々独自のものであり,その特性については十分に理解されていないので,既存の方法に比べてどのような特徴があるのかを整理して,発表します. また,非平衡物理系の振る舞いを理論的に解析します.ここでは第一原理から結果を求め,有限温度の物体の振る舞いの背後にあるダイナミックスの理解に貢献していきいます.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度については,主に旅費の出費が予定より少なかったために次年度使用額が生じました.これは,計画していたとおり,論文と学会で発表をしましたが,大学からの援助等もあり,他の予算で旅費を出費できたことと,時期と内容が適切な海外の学会が無かったために,海外出張をしなかったことが主な理由です.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は,実験,理論解析をより深く進めて行きます.そのために,計算用PCや実験機材を購入する予定です.さらに,学会等で発表を行なうことを続けていきます.
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