令和元年度には,研究論文を出版することはできませんでしたが,いくつかの方向で着実に研究を進展させることができました.国内学会では発表しました. 氷の表面融解は,物理学だけではなく,気象学,化学,など様々な分野で大変重要な役割を果たします.氷表面の様子をミクロンスケールでスキャンしたのは我々が初めてで,そのデータの解析を行いました.既にこれに関しては論文1本発表していますが,さらに研究を進めています.特に不純物がある場合にどのように表面が変化するのか,という点について実験データを分析し,理論的に解析しました.これについては近日中に論文を発表する予定です. 表面の揺らぎ測定はあらゆる物質に適用できます.化学のグループと実用性の高くて注目を集めている物質で,性質がよく理解されていない物質の物性の共同研究を行いました.2次元でのスキャンも行い,どのように位置により変化しているかも調べました.実験解析と理論分析を多くのサンプルについて行い,今までわかっていなかった性質も明らかになりました.近日中に成果を発表する予定です. 我々の揺らぎ測定の技術は表面だけではなく,物質中の揺らぎにも適用できます.新たな方向の研究として,物質内の揺らぎを測定し,その性質を解析しています.今まで,測定されていないと思われる揺らぎであり,物性との関係を明らかにしつつあります.この揺らぎは微小であるので,今までの我々の開発した雑音除去の技術が重要な役割を果たします.これは実験的にも未開の研究分野で,理論研究も我々の測定している揺らぎを説明できる段階までは発展していません.物理現象のふるまいの仕組みを明らかにするには時間はかかりますが,オリジナルで重要な進歩に繋がると考えています.
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