連続模型に基づいて提案した、傾いたディラック粒子系を一般的に特徴付ける”一般化されたカイラル対称性”が、離散的な格子模型においても厳密に定義できることを28年度まで示すことができたが、それを利用して、格子模型に基づく様々な概念の一般化が可能となった。昨年度に引き続き、格子模型において、質量ゼロのディラック粒子が偶数個存在しなければならないという、いわゆるフェルミオン・ダブリングという性質が、ディラック・コーンが傾いた場合においても”一般的なカイラル対称性”によってトポロジカルに守られることを、2バンド模型の場合に示した内容を精査し国際会議で発表するとともに、学術雑誌に論文として発表した。 こうした、一般論の構築以外に、2次元フェルミオン・ヴォルテックス系における非整数電荷の傾いたディラック粒子系への拡張についても研究を進め、一般化されたカイラル対称性しか存在しない系において、ヴォルテックスに付随する電荷の値をKernel Polynomial 法を用いて精密に評価した。その結果、通常のカイラル対称性が破れているために、ヴォルテックス構造がなくても、単位胞内部の電荷分布にわずかながら構造が現れることが定量的に明らかとなった。非整数電荷に対するこうした構造の影響は、現在のモデル計算ではあまり大きくないことも判明したが、ヴォルテックスに付随する非整数電荷をどのように定義するかに関わる問題でもあるので、今後、どのようにヴォルテックスに付随する電荷を定義するのかを含め、精密な数値計算結果に基づき、慎重に解析を進めていく必要があることがわかった。 このほか、昨年度に開始したフラットバンド模型における研究の発展として、分数量子化されたベリー位相による2次元カゴメ格子上の量子相の特徴付けの可能性についてより詳しい解析を行い、その結果を学術雑誌に論文として発表することができた。
|