歳差回転球および歳差回転楕円体の内部の定常流の構造とその安定特性を理論および数値解析により調べている。ただし、自転軸と歳差軸が直交している場合に限る。 歳差回転球の場合,流れの特性は2つの無次元パラメター、ポアンカレ―数とレイノルズ数、で決定される。これら2つのパラメター空間の全領域にわたって,定常流の線形安定性の臨界曲線を,有限のレイノルズ数(最大1万程度)に対して直接数値シミュレーションで求めた。別途、レイノルズ数が極めて大きい場合に対しては漸近解析によって臨界曲線の漸近枝を求め、両者を合わせて、パラメター空間における臨界曲線の全貌を明らかにした。この漸近枝は、既存の室内実験や数値シミュレーションによる観測データときわめてよく一致している。また漸近枝を決定する不安定モードが臨界領域に局在していることが特徴である。 次に,歳差回転楕円体の場合、流れの特性を表すパラメターは、上記のレイノルズ数とポアンカレ―数に回転楕円体のアスペクト比が加わる。任意のアスペクト比に対して、レイノルズ数が大きく、ポアンカレ―数が小さな極限における定常流の構造を解析的に求めた、回転楕円体とともに回転する座標系で見れば、流れ構造は,回転楕円体の表面に沿う薄い境界層とそれ以外の非粘性領域に分かれる。非粘性領域における速度場と圧力場は、アスペクト比によって定まる次数をもつルジャンドル多項式の組み合わせで表される。回転楕円体の定常流のこの極限における安定性の臨界線は、すでに実験的に観測されているが、そのベキ法則を今回われわれの得た解析解の線形安定性より導出した。
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