本研究計画の目的は流れが層流から乱流へ遷移する機構と乱流状態を維持する機構を明らかにすることである。具体的には、柱状物体後流における振動流の発生、平行平板間流れおよび急拡大管路中での振動流の発生と維持、熱対流中での振動の発生と維持、バスタブ流の発生と遷移などが具体例であり、これらの流れにおける振動の発生や乱流維持の機構を明らかにすることである。 平成31年(令和元年)度は、矩形断面容器中におけるバスタブ渦の発生条件と振動流への遷移に対する容器形状の影響を調べ、その結果をFluid Dynamics Research に公表した。急拡大部をもつ管路流れにおける振動流の発生について、数値シミュレーションを行い乱流への遷移について調べ、さらに線形安定性解析および解の分岐構造を調べた結果、この流れの不安定性は捕捉不安定性(Trapped instability)という新しい概念で説明できることを見いだしたが、この流れの不安定性は大きなレイノルズ数で起こるため、これまでより高い精度で計算をする必要があることがわかった。そのため、より高精度の計算法を開発しているが、論文として発表できる計算精度が得られていないので継続して研究を行っている。また、流体力学で代表的な流れである平面ポワズイユ流の不安定性の発生機構を調べ、オア・ゾンマーフェルト方程式の複素数解の実部と虚部が作る渦度場である中心渦流れと境界渦流れが相互作用することにより、不安定撹乱であるトルミーン・シュリヒティング波が励起されるという物理的機構を明らかにした。現在、この結果をまとめ、論文を執筆中である。さらに、今年度は本研究計画の最終年であるため、これまでの研究成果を広く公表する目的で、日本流体力学の機関誌「ながれ」に研究成果を「連載1」および「連載2」として発表し、現在「連載3」を執筆中である。
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