研究課題
本研究では理化学研究所の自由電子レーザーSACLAを利用し、自由電子レーザー(FEL)と近赤外(NIR)域フェムト秒レーザーを用いて、原子の電子放出過程の観測を行うことを目指した。昨年度までに、SACLAの軟X線ビームラインBL1を利用して、希ガスのオージェ過程で放出されるオージェ電子にNIRレーザーでサイドバンド形成を確認している。このサイドバンド強度を指標として、2つのレーザーの入射・時間遅延を調整し、空間的および時間的な重なりを最適化することが可能となった。FEL(40eV)をポンプ光、NIRレーザー(1.58eV)をプローブ光として、Xe原子に照射したところ、近赤外レーザーを導入した場合にのみ0.4-1.5eVにかけて明瞭な光電子ピーク群が生成することが分かった。これらのピーク強度の時間変化の観測から、いずれも数十psおよび数nsの2成分の緩和過程を示すことが明らかとなった。これらのピークはXe2+に収斂するXe+の自動イオン化状態およびリュードベリ状態からのイオン化に起因するものと帰属される。さらに、FELの光子エネルギーを67eVとした場合には、NIRレーザー照射により、40eVの場合とは異なる光電子ピークが観測された。これは,Xe4d(J=5/2)内殻正孔崩壊に伴って生成したXe2+の準安定状態からのイオン化であるものと考えられる。このとき、時間ゼロ近傍においては内殻正孔崩壊に伴うオージェ電子のスペクトル構造に明瞭な変化が見出された。この結果は多重イオン過程の過渡的変化を示しており、近赤外レーザーによる量子状態操作に起因する可能性が示唆される。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
SPring-8/SACLA利用成果集
巻: 5 ページ: 291-294
10.18957/rr.5.2.291
巻: 4 ページ: 344-347
10.18957/rr.4.2.344