レーザー冷却によってボース・アインシュタイン凝縮させたルビジウム原子に対し運動量選択的な誘導ラマン散乱を行うために、昨年度から継続して、光学遷移に必要な狭帯域・高安定度を併せ持つ新たなレーザー光源の製作に取り組んだ。 昨年度、干渉フィルター1枚を共振器中に挿入した従来型の周波数安定化半導体レーザー光源を製作し、そのレーザー発振を確認するところまで進んでいた。今年度、この狭帯域レーザー光の周波数特性を計測できる光学システムを新たに構築し、その出力光の発振特性を測定したところ、遷移に要求される10 kHz以下の狭い周波数線幅は実現しているものの、掃引可能な周波数範囲が狭く、温度による周波数ドリフトによって数秒程度でモードホップが発生し、安定な光源としては使用することが困難であることが明らかとなった。そこで、より広い周波数範囲に亘って連続的な掃引が実現できるよう、free spectral rangeが僅かに異なる2枚のソリッドエタロンを用いた周波数安定化の手法を新たに考案し、この新手法に基づく従来とは異なる周波数安定化レーザー光源の製作に取り組んだ。その結果、これまでと同様な10 kHz以下の周波数幅で、150 MHz以上のより広い連続周波数掃引範囲を持ち、フリーランの状態においても2分以上モードホップなしにレーザー発振が続くことが確認され、運動量状態間の誘導ラマン散乱を実現するために十分な性能を持つレーザー光源が実現できた。
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