研究実績の概要 |
本研究の目的は、マイクロ波やラジオ波を用いてスピン自由度を持った原子気体ボース・アインシュタイン凝縮体 (BEC) を制御し、非平衡量子ダイナミクスを観測することである。 本研究では、「ドレスト原子による相互作用制御」, 「BECスピン混合系における磁性」, 「散逸スピン系のダイナミクス」という3つの研究を行った。 ドレスト原子の手法を利用した実験では、長時間ダイナミクスを観測するために2体の非弾性衝突が生じない2つの原子準位を利用して実験を行った。2成分BECに共鳴するラジオ波を照射することによってドレスト原子のBECを生成し、ベア原子で生じる相分離構造が抑えられることを実験的に明らかにした。この結果は、ドレスト状態の生成によって混和性の大きさやs波散乱長が実効的に変化したためであると解釈することができる。 スピン混合系の研究では、87Rb原子のスピン1BECとスピン2BECを用いて、非平衡ダイナミクスを観測した。スピン1の原子間相互作用はそれ単体では強磁性を好む。そのため磁化を保持するような作用を起こす。しかしながら、横方向に偏極したスピン1BECと縦方向に偏極したスピン2BECのスピン混合系を生成した場合、スピン1の横磁化の時間的な変調が観測された。混合系の生成によって磁気的な基底状態が変化し、磁化の変調が引き起こされたことを明らかにした。 散逸スピン系の研究では、2体の非弾性衝突が生じるBECスピン系を用いて非平衡ダイナミクスを観測した。実験結果と平均場シミュレーションとの比較から、2体の非弾性原子間衝突による散逸過程が、強磁性スピン状態を残したがるような作用を引き起こしていることを明らかにした。
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