スピン偏極He+ビームを常磁性の物質に照射すると10%程度の非対称度が生じる。この値はポテンシャル散乱のスピン軌道結合による予測値の1万倍程度である。非対称度の散乱角度(θ)依存性は、AuやPt等の90°付近のθで符号変化を示すタイプ、PbやBi等の符号変化を示さぬタイプに大別される。本課題で「Heと標的原子の間に生じる仮想電子移動励起状態において、標的上で電子に働く原子的スピン軌道相互作用がHe核の運動の異常なピン軌道結合の起源となる」ことを示した。占有5d電子の励起により実験に対応する非対称度を生じる。共鳴励起に近いPb等では符号変化が生じないが、弱共鳴のAu等では符号変化が生じる。
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