研究課題/領域番号 |
15K05243
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
岡 俊彦 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (60344389)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リオトロピック液晶 / 脂質 / キュービック相 / 相転移 / X線回折 |
研究実績の概要 |
脂質モノオレインのⅡ型キュービック相の単結晶領域を用いて、ダイアモンド型からジャイロイド型へのキュービック相の間での相転移を調べた。直径0.5mmの細管中の単結晶中で相転移を起こさせることによりダイアモンド型とジャイロイド型を共存させ、X線回転結晶法により結晶方位を精度よく調べた。この結果、相転移の前後で特定の方位が対応するエピタキシャル関係が存在することを明らかにした。ダイアモンド型の結晶方位[111]と[-110]がジャイロイド型の結晶方位[101]と[010]した。これを元に相転移過程のモデルを作成した。キュービック相では脂質の膜面がチャネルを形成するように水の存在する空間を隔てるが、その水チャネルの構造がダイアモンド型では4分岐、ジャイロイド型では3分岐となる。このため水チャネルのダイアモンド型の一つの4分岐構造が、相転移によりジャイロイド型では二つの3分岐構造となる。今回の結果からこの過程で水チャネルの一つの方位が保存し、他の部分の角度変化は最小となるように変化していることが明らかとなった。これにより保存される方位がこれまでの予想とは異なることを示し、理論的に基づくモデルの修正を求めるものとなった。同時にこの相転移過程の解析はより進んだ実験が必要となることが明らかとなった。また他の相についても単結晶作成を進めているが、すでに単結晶の得られているものもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相転移の測定に関しては、脂質モノオレインのⅡ型キュービック相の単結晶領域を用いて、ダイアモンド型からジャイロイド型への相転移を測定することに成功し、論文を発表している。単結晶領域の作成に関しては、他の物質となるがⅡ型ヘキサゴナル相の単一領域(単結晶領域)の作成にも成功しており、結果をまとめた論文を投稿中である。これ以外にも複数の物質においてキュービック相の単結晶領域の作成には成功している。このため研究計画は順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに多くの物質も含めてキュービック相・ヘキサゴナル相の単結晶領域の作成を進めていく。またそれらを利用した相転移研究も進めていく。現状のデータ解析の方法ではX線回折から電子密度を求めることは可能であるが多大な労力が必要である。それを簡単に行えるような技術的な開発も進めていく。
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