研究課題
水中において両親媒性分子は、疎水効果によりミセルやベシクルなどの様々な自己会合構造を形成し、その構造は温度や濃度、分子間相互作用によって容易に変化する。本研究では両端に親水部を、その間に疎水部を持つ双頭型両親媒性分子の粗視化モデルに対する大規模な散逸粒子動力学(DPD)シミュレーションを実行し、自己会合過程の解析を行った。双頭型両親媒性分子の分子モデルとして粗視化モデルを採用し、両側の親水基は1つの親水性粒子(A及びC)からなり、真ん中の疎水基は3つの疎水性粒子(B)からなる屈曲性分子であるとした。また、溶媒粒子は1つの親水性粒子(S)でモデル化した。粒子間の非結合相互作用は、最大反発力の値a_ij (i, j = A, B, C or S)により記述されるが、本シミュレーションでは特に、(1)A同士の最大反発力の値a_AA、及び(2)C同士の最大反発力の値a_CCに着目した。まず、双頭型両親媒性分子1000個と溶媒粒子40000個をランダムに配置し、a_AA及びa_CCの様々な値に対してDPDシミュレーションを1000000ステップ実行した。そして、得られた平衡構造の解析を行い、a_CCを縦軸、a_AAを横軸とする相図を作成した。その結果、a_CC≒a_CSの場合、Δa(≡a_AA-a_CC)≦0のときは球状ベシクルが形成されるのに対して、Δa>0のときは細長いひも状ミセルが形成されることが分かった。これは、Δaが大きくなるにつれて、A同士の最大反発力がC同士の最大反発力よりも大きくなるため、双頭型両親媒性分子-溶媒界面の曲率が大きくなるからであると考えられる。また、Δaが小さくなるとともに球状ベシクルの大きさが小さくなることも明らかになった。さらに、a_CCとa_CSの差が大きい場合、ひも状チューブも形成されることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた通り、粒子間相互作用の様々な値に対して散逸粒子動力学シミュレーションを実行し、得られた平衡構造の解析も進んでいるため。
平成27年度の研究をさらに推し進め、両親媒性分子の剛直性が自己会合構造に及ぼす影響を明らかにするため、半屈曲性双頭型両親媒性分子を用いた散逸粒子動力学(DPD)シミュレーションを実行する。また、粒子間相互作用の大きさを変化させることにより自己会合構造がどのように変化するのかについても解析を行う。さらに、双頭型両親媒性分子の粗視化モデルに対する分子動力学(MD)シミュレーションを実行し、有機ナノチューブ・ナノベシクル形成機構の解明を行う。MDシミュレーションで用いる双頭型両親媒性分子の粗視化モデルでは、親水性粒子(親水基A, C及び溶媒粒子S)と疎水性粒子Bの間、及び、2種類の親水基AとCの間の相互作用は斥力のみのソフトコア・ポテンシャル、親水性粒子同士及び疎水性粒子同士の間の相互作用はレナード-ジョーンズ(LJ)ポテンシャルで表す。本シミュレーションでは特に、(1)A同士の相互作用パラメータε_AA、及び(2)C同士の相互作用パラメータε_CCに着目する。まず、双頭型両親媒性分子と溶媒粒子をランダムに配置し、ε_AA及びε_CCの様々な値に対して中規模MDシミュレーションを実行する。そして、得られる平衡構造の解析を行い、ε_CCを縦軸、ε_AAを横軸とする相図を作成する。なお、シミュレーション時間の制約のため中規模MDシミュレーションによる相図の作成が困難な場合は、系のサイズをさらに小さくした小規模シミュレーションを実行する。
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