研究課題
両親媒性分子は、水中においてミセルやベシクルなどの様々な自己会合構造を自発的に形成する。本年度は、両親媒性分子の剛直性が自己会合構造に及ぼす影響を明らかにするため、半屈曲性双頭型両親媒性分子を用いた散逸粒子動力学(DPD)シミュレーションを実行し、自己会合過程の解析を行った。双頭型両親媒性分子の分子モデルとして粗視化モデルを採用し、両側の親水基は1つの親水性粒子(A及びC)からなり、真ん中の疎水基は3つの疎水性粒子(B)からなる半屈曲性分子であるとした。また、溶媒粒子は1つの親水性粒子(S)でモデル化した。DPDシミュレーションにより得られた平衡構造の解析を行い、C同士の最大反発力の値a_CCを縦軸、A同士の最大反発力の値a_AAを横軸とする相図を作成した。その結果、屈曲性双頭型両親媒性分子の場合には現れなかった「チューブ」の形成を確認することができた。さらに、DPDシミュレーションにより得られた平衡構造の安定性を確かめるため、双頭型両親媒性分子の粗視化モデルに対する分子動力学(MD)シミュレーションを実行した。MDシミュレーションで用いる双頭型両親媒性分子の粗視化モデルでは、親水性粒子(親水基A, C及び溶媒粒子S)と疎水性粒子Bの間、及び、2種類の親水基AとCの間の相互作用は斥力のみのtruncated-shifted レナード-ジョーンズ(LJ)ポテンシャル、それ以外の粒子間相互作用はLJポテンシャルで表す。まず、DPDシミュレーションにより得られたベシクルを初期配置として用い、A同士の相互作用パラメータε_AA、及びC同士の相互作用パラメータε_CCの様々な値に対してMDシミュレーションを実行した。その結果、相互作用パラメータε_AAの値に応じて、穴あきベシクルや球状ミセルへの形状変化を観察することができた。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた通り、半屈曲性双頭型両親媒性分子を用いた散逸粒子動力学(DPD)シミュレーションを実行し、得られた平衡構造の解析も進んでいる。また、DPDシミュレーションにより得られた平衡構造を初期配置として分子動力学(MD)シミュレーションを実行し、DPDシミュレーションにより得られた平衡構造の安定性解析も進んでいるため。
平成28年度の研究をさらに推し進め、半屈曲性双頭型両親媒性分子を用いた散逸粒子動力学(DPD)シミュレーション、及び分子動力学(MD)シミュレーションを実行する。DPDシミュレーション研究では、得られた相図からナノチューブ・ナノベシクルが形成されるパラメータ領域を特定し、それぞれの形成条件を明らかにする。MDシミュレーション研究では、様々な粒子間相互作用パラメータの値に対して得られる平衡構造の解析を行い、ε_CCを縦軸、ε_AAを横軸とする詳細な相図を作成する。そして、DPDシミュレーションにより得られた相図と比較することにより、両シミュレーションにおける相互作用パラメータ(a_AAとa_CC、及び、ε_AAとε_CC)のマッピング(関連付け)を行う。なお、シミュレーション時間の制約のためMDシミュレーションによる相図の作成が困難な場合は、系のサイズを小さくした小規模シミュレーションを実行する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 8件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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