研究実績の概要 |
両親媒性分子は、溶媒中においてミセルやベシクルなどの様々な自己会合構造を自発的に形成する。昨年度までは、非対称双頭型両親媒性分子の自己会合過程を散逸粒子動力学(DPD)シミュレーション及び分子動力学(MD)シミュレーションにより調べた。本年度は、対称双頭型両親媒性分子を用いたDPDシミュレーションを実行し、自己会合過程の解析を行った。対称双頭型両親媒性分子の分子モデルとして粗視化モデルを採用し、両側の親水基は1つの親水性粒子(A)からなり、真ん中の疎水基は3つの疎水性粒子(B)からなる屈曲性分子であるとした。また、溶媒粒子は1つの親水性粒子(S)でモデル化した。粒子間の非結合相互作用は、最大反発力の値a_ij (i, j = A, B or S)により記述されるが、本シミュレーションでは特に、A同士の最大反発力の値aAAに着目した。まず、対称双頭型両親媒性分子1000個と溶媒粒子40000個をランダムに配置し、a_AAの様々な値に対してDPDシミュレーションを1,000,000ステップ実行し、自己会合構造の形成過程を解析した。その結果、4種類の自己会合構造(内部構造を有する球状ミセル、チューブ、ベシクル、ひも状ミセル)が得られたが、親水基間の反発相互作用パラメータa_AAが大きくなるにつれて、凝集体の形態が球状ミセルからチューブへ、さらにベシクルへ、最終的にひも状ミセルへと変化することが明らかになった。また、自己会合体中における分子形状(棒状またはU字状)を解析した結果、ベシクルにおける棒状分子の割合は、他の自己会合構造(球状ミセル、チューブ、ひも状ミセル)に比べて多いことが分かった。これは、4種類の自己会合構造の中でベシクルの曲率が最も小さいためであると考えられる。
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