研究課題/領域番号 |
15K05247
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
浦上 直人 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (50314795)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 生物物理 / 計算物理 / 高分子構造・物性 / 超分子科学 / 分子認識 |
研究実績の概要 |
アメーバなどの単細胞生物の運動を理解するため、「タンパク質の会合体形成・解離のためのシミュレーションモデル構築」、「ゲスト分子を含まない場合と含む場合のベシクルの形状変化」について研究を行った。 「タンパク質の会合体の形成・解離のためのシミュレーションモデル構築」に関しては、タンパク質モデルとして、修飾シクロデキストリンの粗視化モデルを構築した。修飾シクロデキストリンは、修飾部分が他の修飾シクロデキストリンに包接することで、互いに連結することが可能であり、線状に連なった包接化合物、線状の包接化合物の末端の修飾シクロデキストリン同士が包接した環状の包接化合物、さらには、修飾部分の高分子鎖を長くすることで複数の修飾シクロデキストリンが包接した枝分かれ構造を持つ包接化合物の形成を確認した。これらの構造は、タンパク質の会合体を形成する上で重要な知見を与えてくれるため、現在、包接化合物の形成メカニズムの詳細を調べている段階である。 「ゲスト分子を含まないベシクルの形状変化」に関しては、細胞運動を理解する上でベシクルのみの系において形状変化メカニズムを理解することは重要である。これまで散逸粒子動力学法や分子動力学法により、それらの形状を再現し、その形状変化メカニズムを調べてきた。その過程で、ある条件下でベシクルが分裂することが分かった。ベシクルの分裂は、細胞運動と並び、生命において非常に重要なプロセスであるため、詳細な研究を進めている。 「ゲスト分子を含むベシクルの形状変化」については、高分子鎖を内包したベシクルの形状変化に関するシミュレーションを開始した。高分子鎖のポテンシャルパラメータにより高分子鎖の硬直性を変化させることで、ベシクルの形状変化を調べている。現段階では、また有意義な結果は得られていないが、今後も継続してシミュレーションを行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
修飾シクロデキストリンによる多様な包接化合物形成をシミュレーションで再現することができたことで、今後の研究を進める上で指針を得ることができた。また、ゲスト分子を含まない系においても、ベシクルの分裂現象を再現することができたことで、分裂過程を詳細に調べることが可能になった。これらの研究成果により、今後、ゲスト分子を含む場合のシミュレーションにおいて、ゲスト分子の役割等を明確にするための指針を得ることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
修飾シクロデキストリンによる多様な包接化合物形成のシミュレーションを昨年度と同様に進め、タンパク質の会合体の形成・解離におけるシミュレーションモデルを構築するための必要な知見を得る予定である。また、細胞運動を理解する上で、ベシクルの形状変化を調べることは非常に重要となるため、この研究においてもゲスト分子を含む場合と含まない場合の両方でシミュレーションを継続していく。特にゲスト分子を含む場合については、ベシクル内にゲスト分子を閉じ込めることによる影響、および、2分子膜との相互作用による形状変化について調べ、ベシクルの分裂への影響も合わせて研究を進めて行く予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に発表を予定していた学会が大学行事と日程が重なったことで発表できなかったことや高速計算機が予定よりも低予算で購入できたことなどにより、次年度使用額生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
差額分は、現在当初予定していたよりも計算機台数が必要となっており、その購入費用にあてる予定である。
|