研究課題/領域番号 |
15K05249
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
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研究分担者 |
吉森 明 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90260588)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コロイド分散系 / 電解質溶液 / 溶媒の粒子性 / 相挙動 / 実効相互作用 / 積分方程式理論 / 粗視化シミュレーション |
研究実績の概要 |
昨年度は、一昨年に研究室の院生が全員卒業してしまったことに伴う研究室の再立ち上げに時間を要することとなった。そのため、多くの研究を再立ち上げする必要があった。一つ一つ取り組み、積分方程式理論を用いて溶媒分子の効果を考慮した巨大分子の実効相互作用を計算した。そして、その実効相互作用に基づく統計力学理論計算を行い、相図の計算を進め論文を発表することができた。この統計力学理論は古典流体の密度汎関数理論と摂動論に基づいている。 上記の手法を用いて荷電系についての計算も進めつつある。その最初の研究発表を仙台において行われた研究会で行うことができた。さらに、荷電系の実効相互作用について積分方程式理論を用いて、共イオン効果まで実験と矛盾しない形で再現できることも発見した。なお、この共イオン効果は、よく知られた線形のポアソンーボルツマン方程式の解を利用したDLVO理論とは逆の傾向を示しており、論文化する価値があると考えられる。この計算は実験的検証の際に意味を持つことになると考えている。また、この実効相互作用を元に粗視化シミュレーションを行った。このシミュレーションの立ち上げは、今後溶媒効果を考慮した場合のクラスター計算に役立つと考えられる。それらの結果は日本物理学会、生物物理学会などで発表した。現在論文を準備中である。 派生的な研究として、剛体表面上での2成分剛体球系の分布関数を計算し、吸着の自由エネルギーや吸着量を計算する作業も行なっている。サイズによって選択的吸着が起こり、実験結果に近い結果を得ることができている。これも日本物理学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度前半は学生が全部入れ替わってしまったために、一時期非常に大きな遅れあるいは後退とも呼ぶべき状態が発生した。幸い、新たに所属した学生、博士研究員らと一つ一つ再立ち上げを行い、遅れをかなりの度合いで取り戻した。実際、論文を出版し、招待に当たる講演を含む研究発表を数多く行うことができた。 また、実効相互作用に基づく相図の統計力学計算や粗視化シミュレーションを再スタートする事ができて多くの進展が見られた。これらはクラスターの計算につながる。 以上のことから『(2)おおむね順調に進展している。』とした。
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今後の研究の推進方策 |
実効相互作用に基づく相挙動の統計力学計算を古典流体の密度汎関数理論と摂動論に基づいて進める。ただし、対象を電解質溶液中の荷電コロイド系などに広げる。また粗視化シミュレーションを積分方程式理論で計算した実効相互作用に基づいて行うことを続けるが、特に溶媒効果まで考慮したケースに進める。 派生的な研究として、剛体表面上での2成分剛体球系の分布関数を計算し、吸着の自由エネルギーや吸着量を計算する計算も行なっているがその論文化や引力効果の計算についてまで研究を進める。 現在進行中の論文の完成を急ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属学生が一斉に卒業したことによる、シミュレーションの再立ち上げにより計算機の購入時期の問題や、新たな研究分担者の参加、また参加する研究補助員の参加時期の問題で資金利用時期を遅らせることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
シミュレーションを担う新たな研究分担者の参加、また参加する研究補助員に多くの額を当てる。また、計算機を前期後半に購入予定である。
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