研究課題/領域番号 |
15K05256
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
瀬戸 秀紀 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60216546)
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研究分担者 |
小貫 明 京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (90112284)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オニオン / 界面活性剤 / ずり粘稠化 / ラメラ構造 / 中性子小角散乱 / 中性子スピンエコー法 / 膜間相互作用 |
研究実績の概要 |
非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンの水溶液にshearをかけると、ラメラ構造からオニオン状のマルチラメラベシクルが形成されるとともにshear thickeningが起きることが知られている。そのメカニズムとしては、shear flowにより膜の揺らぎの不安定化が起こり、ラメラ構造の座屈(buckling)がきっかけとなって多角形状からオニオンになる、と言う理論(buckling mechanism)が信じられているが、実験的に検証したと言う例はなく未解決のままになっている。 そこで我々は今回、bucklingにおいて重要な指標である界面活性剤膜の曲げ弾性係数κと、ラメラ構造における体積弾性率Bを中性子スピンエコー法と中性子小角散乱によって決めることによりbuckling mechanismの検証を試みた。 試料としてはポリオキシエチレンC12E5の10%水溶液を用いて、これにイオン性界面活性剤SDSや拮抗的塩RbBPh4を加えて膜間相互作用を変化させたときの振る舞いを調べた。その結果電荷を増やすに従ってラメラ構造が安定化することとともに、膜の曲げ弾性率が高くなることが分かった。またラメラの繰り返し周期dは電荷の増加によって小さくなることが分かったが、電荷量の多い組成では膜の曲げ弾性率の増大による膜の揺らぎの減少によって説明できるのに対して、電荷量の少ない組成では説明できないことが明らかになった。 続いて我々は試料にshearをかけたときの構造変化を中性子小角散乱により調べた。その結果、電荷量の多い組成ではラメラ構造の面間隔変化がなかったのに対して、電荷量の少ない組成ではshearの増大に対して増加する傾向が見られた。この結果から、膜間相互作用が強い場合と弱い場合とでは、bucklingの進み方が違うことが分かった。 また理論的考察により、拮抗的塩が固液界面近くに作る電気二重相の分布を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非イオン性界面活性剤水溶液のずり粘稠化とそれに対する電荷の効果について、実験結果を論文にまとめて投稿した。もう一つの課題である水と有機溶媒に拮抗的塩を加えた場合にできるラメラ構造とずり粘稠化については、現在データ解析中であり1年以内に論文発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果と実験結果を元に、水と有機溶媒の混合系に拮抗的塩を加えた場合に現れるラメラ構造にずり流動を加えた場合の粘稠化のメカニズムを実験面と理論面から明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたアメリカ標準技術研究所における中性子散乱実験のビームタイムが確定せず、次年度以降に実施予定となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
アメリカ標準技術研究所にビームタイム申請を行い、採択されれば実験旅費として使用する。また申請の状況と国内(J-PARC)の準備状況によっては、計画していた実験をJ-PARCで行う可能性もある。その場合は実験に必要な試料と周辺機器の整備に用いる。
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