研究課題
非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンの水溶液にずり流動をかけると、「ずり粘稠化」が起きることが知られている。そのメカニズムとしては、ずり流動場により膜の揺らぎの不安定化によりラメラ構造の座屈(buckling)がきっかけとなってオニオンになる、と言う「座屈メカニズム」が信じられているが、実験的に検証した例はほとんどなかった。そこで今回、界面活性剤膜の曲げ弾性係数κと、ラメラ構造における体積弾性率Bを中性子スピンエコー法と中性子小角散乱により求め、ずり粘稠化のメカニズムを明らかにすることにした。試料としてはポリオキシエチレンC12E5の10%水溶液として、これにイオン性界面活性剤SDSや拮抗的塩RbBPh4を加えることにより、膜間相互作用を変化させた。その結果電荷を増やすに従ってラメラ構造が安定化することとともに、膜の曲げ弾性率が大きくなることが分かった。またラメラの繰り返し周期は電荷の増加によって減少するが、膜の揺らぎの変化によって説明できる場合とできない場合があることが明らかになっ た。続いて我々は試料にずり流動場をかけたときの構造変化を中性子小角散乱により調べた。その結果、電荷量の多い組成ではラメラ構造の面間隔に変化がなかったのに対して、電荷量の少ない組成ではずり流動場の増大に対して増加する傾向が見られた。この結果から、膜間相互作用が強い場合と弱い場合とでは、座屈の進み方が違うことが分かった。 以上の結果により、膜間相互作用と膜の揺らぎがどのようにオニオン形成に影響するかを明らかにするとともに、座屈のメカニズムを検証することができた。一方小貫は、誘電体転移するガラスの大規模計算機実験を実行した。また拮抗的塩によって形成される電極周りの電気2重層の理論を作り、液体ー液体臨界点近傍の溶媒中のコロイド粒子周囲の吸着層を調べた。
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