研究実績の概要 |
本研究では、東北沖に新たに建設される日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を用いて、現在観測空白域となっている海域下のスロースリップの状況把握や地震発生過程の理解を目指す。本年度は、昨年導入した大量の波形データを扱うことができる計算機でプログラム類を整備し、陸上データを用いた繰り返し地震解析を行ったほか、マッチドフィルター解析やOBSを用いた海域データ解析に着手した。研究成果としては、陸上データを用いた小繰り返し地震解析では,関東地方において地下のプレートの動きの時間変化を調べ、太平洋プレートとフィリピン海プレートの2つのプレートについて、東北沖地震後、沈む込み速度の加速が起きたことがわかった(Uchida et al., Geophysical Research Letters, 2016; 本科研費番号を記して公表)。この論文は、高く評価され、Editor’s highlight に選ばれた。また、海溝海側の地震活動に関し、1933年昭和三陸地震と同地域の最近の地震活動を解析し、1933年の地震の余震が海溝を挟んで陸側・海側の両側に分布していること、最近の地震活動が1933年の余震分布と対応していることがわかった(Uchida et al., Geophysical Journal International, 2016)。さらに、東北沖地震の余効すべりの推移を推定し、その時空間分布を明らかにした(Iinuma et al., Nature Communications, 2016; 本科研費番号を記して公表)ほか、繰り返し地震波形の高周波数成分の解析から、破壊過程の多様性を明らかにした (Hatakeyama et al., Geophysical Journal International, 2016; 本科研費番号を記して公表)。
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