研究課題/領域番号 |
15K05262
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬場 聖至 東京大学, 地震研究所, 助教 (70371721)
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研究分担者 |
小山 崇夫 東京大学, 地震研究所, 助教 (00359192)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マントル遷移層 / 電気伝導度 / 西太平洋 / 海底電磁気観測 / 水 |
研究実績の概要 |
本研究は、西太平洋域における海底電磁気観測データの蓄積を活かした電気伝導度構造イメージングに基づき、この海域下のマントル遷移層内水分布を高分解能かつ定量的に推定することを目指して、それに必要なデータ解析技術を革新的に発展させることを目的としている。 平成29年度は、6月に研究協力者と勉強会を開催した。 電気伝導度構造を推定するためのインバージョン手法に、入力する外部磁場変動について複雑な空間分布に対応させる点と西太平洋域の海底で観測された磁場データから複数のソース変動を分離する点についてそれぞれ以下の進展を得た。 前者について、磁気圏・電離圏物理学分野で研究されているGAIAモデルにより計算される地磁気静穏日変化(Sq)を用い、表層の海陸境界と1次元成層構造を組み込んだ電気伝導度構造による電磁誘導の効果を計算して、実際に地磁気観測点で測定された磁場値との比較を行った。またインバージョンのでは、このテストモデルを用いて感度計算を行い、深さ200~400kmに最も感度が高いことが分かった。 後者について、独立成分分析を応用した予備的な解析を実施した。推定するソース信号の数や各信号の時間変動の特長のほか、パワースペクトルや、混合係数の緯度・経度との相関を詳細に検討した結果、観測された静穏時日変化を定性的にはよく復元するソース信号を推定することに成功した。 これらの成果は、8月にケープタウンで開催されたIAPSO-IAMAS-IAGA Joint Assemblyおよび10月に開催された地球電磁気・地球惑星圏学会講演会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、複雑な空間分布を持つ外部磁場変動成分を組み込んだインバージョン手法について開発が進み、GAIAモデルにより再現されたSq場を実際に入力したテストを実施することができた。北西太平洋の海底電磁気観測データは、論文として公表できた。一方、実データから外部磁場変動成分を分離する手法についてもSq場を定性的に分離することに試験的には成功したが、あらゆるデータに応用できるよう手法を一般化させる上で、更なる工夫が必要であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、外部電磁場変動の分離手法の一般化を進める。インバージョン手法も実データを用いた解析を進める。これらの結果について、8月中旬にデンマークで開催される、24th Electromagnetic Induction Workshopにて発表する。また関連研究の進展状況についても情報収集を行う。更に、西太平洋域のマントル電気伝導度モデルを推定し、マントル遷移層内の水分布を定量化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、研究の進展状況を鑑みて、研究代表者・分担者および協力者の成果発表に必要な旅費に重点的に支出し、物品費には支出しなかったところ、差額が生じた。この差額は次年度予算と合わせ、参加予定の24th Electromagnetic Induction Workshop(8月、デンマーク)および地球電磁気・地球惑星圏学会講演会(11月、名古屋)の参加登録費、旅費に使用する予定である。
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