研究課題/領域番号 |
15K05263
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沖野 郷子 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30313191)
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研究分担者 |
町田 嗣樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム, 特任技術研究員 (40444062)
川口 慎介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 研究員 (50553088)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海洋トランスフォーム断層 / 中央海嶺 / 蛇紋岩 / 磁気観測 / 流体湧出 |
研究実績の概要 |
地球内部の水の分布と循環は、地球のダイナミクスを規制する重要な要因である。沈み込むプレートにおいて水は含水鉱物として蛇紋岩の中に存在するとされるが、その実態はまだよくわかっていない。本研究では、沈み込む前の海洋プレートにおいて、リソスフェリックマントルがどの深度まで、どのような広がりを持って、どの程度蛇紋岩化しているかを観測し、地球内部の水の分布状況と循環についての理解を深めることを目的とする。27年度は、水の入り口として重要な海洋トランスフォーム断層(OTF)及び断裂帯において、研究船を用いた地球物理・化学観測を実施した。 1.調査準備 インド洋のマリーセレストOTFの既存の 地形・磁気・岩石・熱水試料について検討し、観測計画を立案した。韓国海洋科学技術院(KIOST)が当該海域の調査を実施していたため、韓国研究者と連絡をとり、データの交換および共同研究の申し入れをして実現した。過去に実施したインド洋蛇紋岩体の磁気異常探査の結果を論文として公表した。 2.研究船による観測 H28年1月に研究船「白鳳丸」および「よこすか」により、インド洋中央海嶺のマリーセレスト OTFとアルゴOTF周辺海域の観測を実施した。具体的には(1)主に「よこすか」で高分解能の地形データを取得した。(2)船舶搭載の重力計・磁力計を用いた広域探査を両船で実施したほか、白鳳丸航海においては、二つのOTFを横断する深海曳航磁力計観測を実施した。(3) OTF下部およびマリーセレストOTF内部にある高まり(median ridge)などから岩石を採取した。Median ridgeからは海洋性地殻の構成物が得られ、蛇紋岩体ではないことが明らかになった。(4) OTF内部および隣接する海嶺軸部においてCTD-多連採水器システムを投下し、流体湧出の探査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で使用を予定していた「白鳳丸」の地形観測装置が老朽化のため性能が発揮できない状況になっていたが、同時期同海域で実施され共同研究者の川口が乗船した「よこすか」による自律式深海探査機調査航海において夜間の広域地形観測を行い、データを得ることができた。また、韓国との共同研究を立ち上げ、韓国が同海域において取得した地形データを補完的に使用することが可能になり、研究計画上は大きな支障はなくなった。OTFを横断する深海曳航磁力計探査については、当初はマリーセレストOTFの端と中央部で2本の測線を実施して、蛇紋岩化の影響を比較する予定であったが、サイクロンの発生により同海域では1測線しかできなかったため、もう1測線はアルゴOTFでの観測に切り替えた。同一OTF内の比較ができなくなったことは痛手であるが、異なるOTFでのデータが得られたことで、より一般的な解釈が可能になるという利点もある。岩石、流体の採取は計画通り実施できた。以上から、総合的にはおおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
概ね予定の観測データが得られたので、インド洋のOTF観測結果の解析に関しては、計画通り実施する。具体的には、1) 断層の分布:地形・表層地質データから、OTF を構成する断層の精密な分布図を作成、median ridgeの成立過程の推定を行う、2) 蛇紋岩体の分布: 重力異常からOTFの密度構造モデルを構築し、蛇紋岩化領域の広がりと密度の低下度を推定する。磁気異常に関しては、OTFをはさんだ海底の磁気異常を利用して、熱残留磁化の成分と誘導磁化の成分を分離し、誘導磁化が蛇紋岩化に伴い生じた強磁性鉱物によると仮定して、蛇紋岩化領域の広がりと蛇紋岩化度を推定する、3) 蛇紋岩化プロセス:採取した岩石の主要・微量元素組成、同位体組成の分析を行い、母岩の 変質の度合い、水―岩石反応の詳細を研究する。蛇紋岩化については、ラマン分光分析による微細 組織に対応した蛇紋石相の決定とその温度圧力条件について検討し、蛇紋岩化プロセスを定量的に明らかにする。4) 蛇紋岩化に伴う流体湧出: センサ及び採水試料を用いて、水塊の温度/濁度/pH/メタン/水素ガスの分析を行い、湧出域の有無を判定し、その化学的特徴とフラックスを推定する。 断裂帯におけるパイロット観測に関しては、申請した航海が不採択であったため、観測を断念する。代わりに、世界のOTFに関して構造のコンパイルを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は主にインド洋観測のための観測旅費および観測にかかる消耗品類を購入する予定であった。航空賃が想定より安価であったこと、消耗品類の一部を在庫品で間に合わせたことなどから、約15万が未使用のまま残った。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画にはなかったが、計画推進のために韓国との共同研究を開始したため、次年度韓国を訪問して研究打ち合わせをする必要が生じた。そこで、27年度の未使用額を28年度に打ち合わせ旅費として使用したい。
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