研究課題
本研究では,制御震源データの総合波形解析法によって,プレート境界の精密な構造推定を行うことを目指した.これは,プレート境界域でのすべり特性の理解に大きく貢献する.H30年度は,手法の改良とこれまでの解析の見直しと総括を行った.本研究では波形解析手法の確立を目指し,人工震源からの幾何学的減衰を正しく評価し,プレート境界面における反射特性を求める手法を開発した.前者は,asymptotic ray theoryに基づくもので,震源-プレート境界反射面-観測点までの波線の経路とその幾何学的減衰を精度よく求めるものであり,paraxial ray theoryまで取り入れた評価方法を開発した.更に,境界面が曲面の場合には,同じ観測点に複数の経路で到達する波があり,それらを正しく分類してその走時と振幅を計算するアルゴリズムを完成させた.反射係数計算においては,単純な1枚の面にとどまらず層構造を成す場合にも,波動論的に反射・透過係数を求める手法を開発し,その定式化と計算コードの正しさを検証した.2006年の紀伊半島探査データに対し,干渉法及びCRS/MDRS法によってプレート境界,上盤側の付加体及び中央構造線の深部構造を求めた.反射波の波線経路は複雑で,経路毎に反射係数そのものを推定することは困難であったが,上述の波線計算によって観測波形をよく説明する構造モデル構築に成功した.プレート境界の反射特性は,固着域では単純な低速度層(厚さ<1 km,速度=3.5~5.5 km/s)によって,定常的すべり域においては,厚さ3-4 kmに分布する反射体群によって特徴づけられることを,理論波形計算で明らかにした. 2004年の紀伊半島中央部測線の解析では,外帯側では北傾斜の面が顕著であるのに対し,内帯側では水平な反射面が顕著であり.両者の地質構造の発達過程の違いに起因するものと考えられる.
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