前年度までの成果として明らかになったのが「高速微惑星による弧状衝撃波はコンドリュール形成に適当ではない」ということであった。それを踏まえ,次の2つの小課題を新たに設定した:(1) 別のコンドリュール形成過程として雷モデルの可能性を検討する,(2) コンドリュール前駆体であるダストアグリゲイトの形成過程を調べる。平成30年度はこれら 2つの小課題についての研究を展開し,それぞれ一定の結果を得た。 まず,雷によるコンドリュール形成として,雷が発生した後,前駆体ダスト粒子がどのように加熱され温度変化するかを,理論モデルを使って調べた。雷電流によって高温になったガスは,その場にあるダスト粒子を加熱する。これには,高温ガスがダストに直接接触することによる加熱と,高温ガスから発せられる放射による加熱の2つの過程がある。一方,熱せられたダスト粒子からも赤外線が放射され,それによってダスト粒子は冷却される。これらの加熱・冷却過程に加え,領域中に存在する高密度ダストによって放射が遮られる効果(光学的に厚くなる効果)も考慮した。特にダスト粒子群による遮蔽効果のため,ダスト粒子の冷却が遅くなることは重要な点である。ダスト粒子の空間密度や粒子のサイズなど,さまざまな条件を変えて調べたところ,適当な条件では,観測から推定されるコンドリュールの温度履歴がよく再現できることがわかった。 次に,コンドリュール前駆体であるダストアグリゲイトおよび微惑星の形成について。分子雲コアの重力収縮に始まる原始星と原始惑星系円盤の形成から,その内部でのダスト微粒子の運動・衝突・合体を数値計算を行って調べた。その結果,分子雲コアからの質量降着が継続している期間は,ダストが合体・成長することによる微惑星形成は進行しないことがわかった。この結果は,Astrophysical Journal誌に掲載された。
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