研究課題/領域番号 |
15K05268
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
関谷 実 九州大学, 理学研究院, 教授 (60202420)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 惑星 / 惑星形成 / 太陽系 / 隕石 / 原始惑星系円盤 / 微惑星 |
研究実績の概要 |
若い星の周りには、原始惑星系円盤と呼ばれるガスとダストからなる円盤が存在することが観測研究により分かっている。一方、あまり熱の影響で変化していない小惑星からやってきたと考えられている隕石は、ミリメートルサイズのコンドルールと呼ばれる球状の岩石を主成分とする。ミリメートルサイズの岩石は、物質間力では付着しないので、重力により集まって微惑星を形成したと考えられる。本研究では原始惑星系円盤中でミリメートルサイズの岩石がどのような条件が満たされると重力で集まり微惑星が形成されるのかを明らかにすることを目的としている。 標準的な原始惑星系円盤のモデルを用いた場合は、ダストが重力で集まって微惑星が形成されることはない。その理由は以下のとおりである。標準モデルでは圧力が中心星に近いほうが強いので、中心星から見て外向きの圧力勾配力が働く。そうするとガス円盤は中心星の周りをケプラー角速度よりも遅く公転する。ダストは中心星の重力の公転軸方向成分により中心面に沈殿する。沈殿によりダストの空間密度(単位体積の円盤に含まれるダストの総質量)が増加すると、圧力勾配力の影響を受けにくくなって、公転速度がケプラー速度に近づき速くなる。この公転速度の差によって円盤には乱流が生じて、ダストの沈殿が進まなくなる。そのために重力によって集まることができるほどにはダストは濃集しない。 平成28年度は、標準モデルとは異なり、ある半径付近に圧力の最大値があるような円盤分布を仮定して微惑星が形成されるか数値シミュレーションにより調べた。その結果、圧力勾配力の動径成分が0になる点付近では乱流が抑えられて沈殿が進み重力によりダストが集まって微惑星が形成される条件が満たされることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、原始惑星系円盤の或る半径で圧力が最大になるようなモデルを仮定し、その付近での微惑星形成過程の数値シミュレーションを行った。このシミュレーションの新しいところは、先行研究で無視されていた中心星重力の公転軸成分を取り入れたことにある。その結果、先行研究の結果とは異なり、圧力が最大になるようなガス分布が時間的にほとんど変わららないこと、および圧力勾配力が0の付近で微惑星形成が促進されることなどを新たに発見した。これらの内容を論文にまとめて国際誌に投稿済みであり、おおむね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究により、圧力勾配力が0になる付近に微惑星が形成されることが分かった。平成29度以降は、さらに微惑星が形成される条件の物理的理解を深め、一般化していきたい。一般化した条件を用いて、始原的隕石に見られるようなコンドルールという球状の石から成る微惑星の形成条件を求め、初期太陽系における円盤の進化と惑星形成過程を明らかにすること目標として研究を進める。 1.数値シミュレーションによる研究:原始惑星系円盤のガスとダストの相互作用の下での微惑星形成過程は非線形であり数値シミュレーションによる研究が欠かせない。複雑な過程であるが、多くの数値シミュレーションの結果を整理統合することにより、微惑星形成条件を物理的に解釈し、一般的に表現することが可能であると予想している。この一般化された条件を求めるために、数多くのシミュレーションを系統的に行っていく予定である。 2.線形解析による研究:数値シミュレーションを行うだけでは、内在する物理過程を理解することは難しい。数値シミュレーションと並行しながら線形解析により、起こっている現象の物理的理解を深めていく。 以上の研究を進めると同時に、内外の学会に出席して、隕石の研究や天文観測から得られた結果、最新の理論研究の成果などの情報を収集し、統合的に考察を進め、微惑星形成過程の解明に向けて研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の投稿準備や受理が当初の予定よりも遅れたために、英文校閲料や投稿料に使用する予定であった額が未使用となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに投稿している論文の投稿料に6万円使用する。さらに現在執筆中の論文を投稿する。その英文校閲に10万円、投稿料に30万円を使用する。成果の学会発表および最新の情報収集のための旅費に30万円、膨大なデータを保存するハードディスクなどパソコン関連消耗品の購入に32万円を使用する。
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