地球の流体核(コア)におけるダイナモ作用による地球磁場生成過程と地磁気永年変化を数値シミュレーションを用いて調査した。当該研究年度においては主に二つの課題に関して進展があった。一つ目は双極子磁場の逆転頻度に関する研究である。コアの対流の活発さ(レイリー数)を変化させ、各パラメータ毎に100万年間オーダーという長時間に渡るダイナモシミュレーションを行った。用いたパラメータに依存して逆転の頻度はことなるので、パラメータ毎に逆転頻度の統計的な解析を実施した。その結果、逆転頻度とレイリー数の間の関係性を明らかにすることに成功した。二点目は磁場の特徴的な構造を生み出す物理的なメカニズムに関する研究である。地球磁場の赤道対称成分と反対称成分の非線型的な結合過程と、その構造を維持するメカニズムをダイナモシミュレーションによってを明らかにすることに成功した。 一点目の研究成果は比較的長い時間スケールの地磁気永年変化に関する研究成果である。古地磁気学に基づく研究結果との比較から、長周期的視点からみた地球のダイナモとその永年変化の特徴に関する新たな示唆を得ることが出来たと考える。二点目の研究成果は数十年間程度の比較的短周期における地球磁場変動に関する新たな知見である。将来の高精度観測との比較を行うことによって地球のコアの対流運動と磁場との相互作用に関する新たな示唆が得られることが期待される。また、地球以外の他の惑星や衛星へも応用できる可能性がある。
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