研究課題/領域番号 |
15K05272
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
吉本 和生 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (10281966)
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研究分担者 |
中原 恒 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20302078)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 長周期地震動 / 堆積盆地 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、大規模な堆積盆地がどのような地震波応答によって大振幅かつ継続時間の長い長周期地震動(表面波:Love波およびRayleigh波)を励起するのか、その励起過程を観測波形の解析から明らかにするとともに、明らかにされた表面波の励起過程を三次元数値シミュレーションに基づいて物理的に解釈することにより、その背景にある波動論的作用を解明することにある。 本研究(期間3年)の一年目にあたる本年度は、主に、地震防災上の観点から社会的な注目度が特に高い関東堆積盆地に敷設された強震観測網(K-NET/KiK-net)および首都圏強震動総合ネットワーク(SK-net)の波形記録を対象とし、水平動記録と上下動記録を独立に解析することにより、周期2~10秒の帯域の表面波(Love波およびRayleigh波)により励起される長周期地震動の震央方位別の大きさと卓越周期の特徴を詳しく調べた。得られた研究成果の詳細については、現在までの進捗状況の項目において紹介する。 また、本年度の研究では、盆地堆積層の地震波速度構造をYoshimoto and Takemura (2014)の手法によりモデル化し、中規模地震を対象とした差分法地震動シミュレーションにより堆積盆地端部の地震波速度構造を推定するための解析手法を開発した。さらに、この解析手法を関東堆積盆地北部に適用して有効性を検証した。この研究成果については国際学術誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関東堆積盆地における長周期地震動の大きさと卓越周期の震央方位依存性を、同堆積盆地の周囲で発生した計15の中・大地震(Mw5.8~6.9)を対象として精査し、以下の特徴を明らかにした。 ・上下動と水平動のフーリエスペクトルを比較すると、水平動の振幅のほうが大きく、卓越周期も長い傾向がある。平均的な卓越周期は、上下動と水平動でそれぞれ4.8秒と6.1秒であった。これらの結果は、関東堆積盆地の長周期地震動の励起においてはLove波が支配的であることを示唆する。 ・長周期地震動の卓越周期は、地震基盤深度2km以浅では地震基盤深度の増大とともに長くなる特徴がある。一方で、地震基盤深度2km以深では周期3~4、6、9秒程度の地震動が卓越する傾向がある。 ・周期3~4秒と周期6秒の地震動については既往研究と整合的(それぞれ、震源断層の破壊継続時間と堆積層により特に強く励起されるLove波の周期に対応する)である。その一方で、周期9秒程度の地震動の成因については不明であり、今後の研究課題である。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展しており、本研究の2年目の平成28年度には、関東堆積盆地の堆積層-地震基盤系の三次元地震波速度構造に関連する以下の研究などを遂行する。 ・近地地震の震源リストを作成し、MeSO-netやSK-netなどのデータを集積し、イベント地震波形のデータベースを構築する。 ・地震波干渉法によって近地地震の波形データを解析し、関東堆積盆地内に分布する地震観測点の直下における地震基盤深度を推定する。 ・近接した地震観測点で収録された地震波形データを対象とし、長周期地震動を引き起こす表面波(Love波およびRayleigh波)の位相速度をアレイ解析により推定できないか検討する。 ・地震波速度の鉛直勾配を取り入れたモデル化手法(Ravve and Koren 2006)に基づいて、関東堆積盆地の堆積層-地震基盤系の三次元地震波速度構造モデルの構築をすすめる。その過程においては、同モデル化手法の長所・短所についても数値シミュレーションに基づいて検討する。 ・地震波速度変化に対するコーダ波の感度カーネルを三次元ベクトル波一次散乱モデルに基づいて評価する。
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