関東堆積盆地における長周期地震動の大きさと卓越周期を、その周囲で発生した計15の中・大地震(Mw5.8~6.9)を対象として調査した。その結果、震央方位によって長周期地震動の地域分布に大きな差異が現れることを確認した。また、上下動と水平動のフーリエスペクトルを比較すると、水平動振幅のほうが大きく、卓越周期が長い特徴がみられた。平均的な卓越周期は、地震基盤深度2 km以深の場所で、上下動と水平動でそれぞれ4.8秒と6.1秒であった。これらの結果は、関東堆積盆地の長周期地震動の励起においてはLove波が支配的であることを示唆する。水平動の長周期地震動の卓越周期は、地震基盤深度2 km以浅の場所では地震基盤深度にほぼ比例して長くなるが、地震基盤深度2 km以深の場所では概ね一定(6~7秒)になる特徴が確認された。ただし、房総半島の中央部では卓越周期が9秒程度にまで長くなる現象がみられた。 関東堆積盆地の地震波速度構造モデルSmoothed Basin Velocity Structure Model (SBVSM) (増田・他 2014; Takemura et al. 2015)を用いた中規模地震の長周期地震動シミュレーションにより、関東堆積盆地南部における長周期地震動の特徴を評価した。その結果、SBVSMは観測された長周期地震動の振幅、包絡線形状、継続時間を概ね再現するものの、東京湾周辺では長周期地震動の大きさと卓越周期を過小評価することがわかった。この傾向は、房総半島の中央部を含む東京湾周辺の堆積層浅部(深度2 km以浅)の地震波速度が、関東堆積盆地内のその他の地域と比べて相対的に小さくなっていることにより説明できることを示した。さらに、海底地震計で収録された地震波形の解析から、海域の相模湾の堆積層上でも長周期地震動が発生していることを確認した。
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