研究課題
平成29年度には、主にこれまでの大気球を用いた成層圏大気観測と数値モデルを用いた理論的研究の成果をまとめ、重力分離と大気年代を用いた成層圏大気循環の研究を前進させた。2015年2月にインドネシアのビアクで大型気球を用いて採取された成層圏大気サンプルを分析することで、高度幅2kmよりも高い鉛直分解能で、7つの異なる高度における二酸化炭素および六フッ化硫黄濃度、N2のδ15N、O2のδ18O、およびδ(Ar / N2)について分析し、高度に依存する大気年代および重力分離を明らかにした。熱帯対流圏界層(TTL)と赤道の成層圏の大気を分析し、TTLから高度22kmまでに二酸化炭素と六フッ化硫黄の年代が徐々に増加し、そのより上層の29kmまでさらに急速に増加することがわかった。二酸化炭素と六フッ化硫黄の年代は、TTLと下部成層圏ではよく一致しているが、24km以上では明らかな差が見られた。 N2のδ15N、O2のδ18O、およびδ(Ar / N2)の平均値はすべて、重力分離効果のために、わずかではあるが明瞭な高度に伴う減少を示すことがわかった。二次元の大気輸送モデルを用いたシミュレーションから、熱帯の鉛直輸送が強化されるにつれて、重力分離効果が減少することがわかった。本研究の結果は、成層圏大気の輸送プロセスの変動を把握するために、大気年代と重力分離の組み合わせが有効であることを強く示唆することができた。これらの研究成果は複数の国際科学雑誌に論文として発表された。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 18 ページ: 833~844
10.5194/acp-18-833-2018
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10.5194/acp-18-1819-2018
SOLA
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