研究課題/領域番号 |
15K05284
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
小橋 史明 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (80377077)
|
研究分担者 |
田口 文明 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (80435841)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 大気海洋相互作用 / 梅雨 / 降水 / 亜熱帯前線 |
研究実績の概要 |
数値モデルを用いた数値実験により,亜熱帯海面水温前線が梅雨降水帯へ及ぼす影響を調べた.始めに,既存の複数の大気モデルおよび大気海洋結合モデルの出力を解析し,人工衛星観測および再解析データとの比較を行った.数値実験に使用した大気モデルは,梅雨の降水帯を比較的よく再現している.数値実験は,衛星観測から得られた水平解像度の高い海面水温データを境界条件として与えて大気モデルを駆動した標準実験と,亜熱帯水温前線の影響を評価するために,海面水温データを空間的に平滑化し,水温前線を人工的に除去した平滑化実験から成る.それぞれ1986年から2005年までの計算結果を使用した.初期値をわずかに変えたアンサンブル実験により,標準実験では3メンバー,平滑化実験では2メンバーのモデル出力を解析した. 2つの実験の梅雨の降水帯を調べた結果,以下の3つの亜熱帯水温前線の効果が明らかになった.第一に,海面からの蒸発である.亜熱帯水温前線の水温は比較的高いため,大量の水蒸気を大気に供給し,梅雨の降水を強化する.第二に,水温前線域の大気擾乱の影響である.亜熱帯水温前線により強化された大気傾圧性に起因する大気擾乱は,水温前線に沿って渦水蒸気フラックスの発散を引き起こし,水温前線上の降水の弱化をもたらす.第三に,水温前線域に形成された平均の低気圧性循環である.この低気圧性循環は,対流圏中下層では亜熱帯ジェットの強化と関係する.強化した亜熱帯ジェットは,水蒸気フラックスの収束をもたらし,水温前線の北側における梅雨の降水を強化する.低気圧性循環の成因については,渦度および熱フラックスを通した渦による平均風の強制が示唆された.これら3つの効果は,梅雨の降水帯の分布において,亜熱帯水温前線が重要な役割を担っていることを示している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,大気モデルを用いた数値実験の解析が進み,これまでの人工衛星観測データおよび大気再解析データの解析と合わせて,大きな成果が得られたと考えられる.成果の一部は,すでに複数の国際学会で発表しているほか,学術誌への投稿の準備も進んでいる.これらの点を踏まえて,おおむね順調に進展していると判断できる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年度にあたるため,これまでの研究成果を積極的に発信していくほか,進行中の研究についても研究分担者および研究協力者との連携を強化し,研究を加速させる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費や旅費,論文投稿費において少額の端数が残った.
|
次年度使用額の使用計画 |
研究成果を発表するための旅費および論文投稿費に使用する予定である.
|