今年度(平成30年度)には、特徴的な成層圏突然昇温(SSW)の季節内予報(約2週間かそれ以内の予報)について、subseasonal-to-seasonal prediction project(S2S)多数モデルを用いた事例解析を主に実施した。予報がリードタイム・モデル・SSW事例によって異なることを示した。特に、SSW事例による相違として、極渦変位型SSWより極渦分裂型SSWの予報がより困難である。リードタイム・モデルによる相違は、極渦の弱化・変形の不足に現れ、さらにそれらは、対流圏・下部成層圏における惑星波活動の過小表現に関連している。 また、今年度は、補助事業期間延長の対象であったが、期間延長の際に申請したように、論文を発表し、国際学会での研究発表を実施した。 研究期間全体では、本課題は、SSW及び極渦強化(VI)を主対象とする成層圏循環偏差の季節内及び季節予報を検証した。季節内予報に関しては、気象庁による事後予報実験・現業予報データおよびS2S多数モデルデータを精力的に検証し、成層圏予報の基本特性を明らかにした:いくつかのSSWを平均すると、5日(10日)のアンサンブル予報では、70%(30%)のメンバーがSSWの発現を適切に予報する;SSWは、同程度の大きさの偏差を持つVIよりも、予報が困難である;極渦分裂型SSWは、極渦変位型SSWより予報が困難である。 気象庁の冬季成層圏季節予報は、長期間平均で、有意なスキルを持つものの、年により現実から外れる場合もある。季節予報の良し悪しと、赤道成層圏の準二年周期振動の関連が示唆される(現実の西風位相時に、予報が悪い)。 以上の成層圏予報の良し悪しは、対流圏・下部成層圏の惑星波予報の良し悪しと強く関連しており(現実に成層圏極渦が弱化する際の惑星波強化が過小)、成層圏予報における対流圏・成層圏結合(上方影響)の重要性を示唆する。
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