研究課題
前年度まで、衛星搭載ドップラー風ライダー(DWL)の数値予報精度への影響(インパクト)を調べるため、観測システムシュミレーションシ実験(OSSE)環境の構築、DWLシミュレーション観測データの作成、データ同化実験の実行、標準的な指標を用いた結果の評価を行ってきた。DWLを同化することによって予報精度が概ね改善するという良好な結果を得ていたが、OSSE研究において用いられる代表的な評価基準(解析場ではなく真値場に対する予報誤差)を用いたところ、顕著な悪化(DWLを同化することにより数値予報誤差が増大)が確認された。この問題に対処するため、データ同化における観測データの品質管理(QC)や観測誤差の設定を再評価し同化実験を30回以上再実行しながら、適切な方法やパラメータを調査した。最終的には、QCの厳格化や観測誤差の定式化の修正・観測誤差値の膨張を行って改善を得た。さらにインパクトの季節依存性や、それを反映したQCの重要性といった、先行研究では明示的には示されていない新たな事実が確認できた。例えば、2010年1月と8月それぞれを対象とした同化実験はいずれも全般的には改善を示すものの、8月実験の方が改善の度合いが小さかった。これはエーロゾル分布の季節変動に関係して、8月は低品質DWLが1月よりも多く、現在のQC処理では十分に排除されていないためである。また熱帯軌道衛星に搭載したDWLと、極軌道衛星に搭載したDWLをそれぞれ同化した実験の結果を比較したところ、同程度の予報精度改善を確認した。ただし熱帯域での予報誤差を詳細に調べたところ、予報時間によって両者の優劣は逆になることが分かった。この要因にとして、熱帯における非線形的な誤差成長特性が影響していると推測しており、同化システムやOSSE構築のさらなる改善が必要である。以上の結果について、英文国際紙に4月に投稿し1月に受理された。
2: おおむね順調に進展している
研究の実行自体及び成果も順調に出ている。ただし研究成果の論文化にやや時間がかかり、1月に英文国際紙に受理された。
研究成果の発表及び今後の計画の検討を進める。具体的には、欧州の研究集会での発表し(9月)、関係者との議論を予定している。この議論等を通して、本研究で対象としたドップラー風ライダーのOSSEの精緻化や異なる条件での調査を検討する。さらに他の衛星観測、例えばひまわりの将来衛星の仕様やインパクトを調査する方法についても検討を始める。
成果をまとめた論文の支払いが平成30年度に実施する。また成果を発表するため、国際研究集会に平成30年9月に参加するため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
J. Meteor. Soc. Japan
巻: 96 ページ: 179-199
doi.org/10.2151/jmsj.2018-024
巻: 95 ページ: 319-342
doi:10.2151/jmsj.2017-018.
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