研究課題/領域番号 |
15K05295
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
益子 渉 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (30354476)
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研究分担者 |
南雲 信宏 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 研究官 (30624960)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 気象学 / 自然現象観測・予測 / 自然災害 |
研究実績の概要 |
2012年5月6日に発生したつくば竜巻の発生機構について、水平解像度50mのシミュレーション結果を用いて解析を行った。その結果、竜巻の渦の起源となる傾圧渦は、フック状の降水物質の先端付近に位置する降水コアの落下に伴い生成されていることが明らかになった。また、最近の米国の研究と異なり、竜巻にはストーム後面の下降流域からだけではなく、暖域からの気塊も一部取り込まれていることが明らかになった。これらのつくば竜巻の発生機構について、米国気象学会論文誌にまとめた。 2013年台風第18号に伴って埼玉県を中心に竜巻が発生した事例を対象に、米国で近年高解像度モデル用の竜巻発生予測指数として使用されているアップドラフトヘリシティについて、水平解像度依存性を調査した。その結果、2km以上の粗い解像度では突風に関係しない活発な対流域に対応してしまうが、1km以下にすると発達した積乱雲の中からスーパーセルに対応するストームを抽出できることが分かった。 突風の実態解明と新たな突風データベースの構築を目的として、全国の気象庁気象官署151地点の1分値地上データを用いて、2002年から2016年までに発生した突風について、統計的に処理し初期解析を行った。その結果3163事例が抽出され、1地点当り平均で1.40回/年、0.82日/年という極めて大きな値となった。JEF0以上に匹敵する強いものに限っても、0.93回/年、0.51日/年という結果になった。その内の約半数は台風に伴うものであった。台風に伴うものは9月がピークであるのに対し、その以外のものは対照的に12月に最も多く夏季は少なくなることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年つくば竜巻の発生機構について、現実的な環境場において再現された水平解像度50mの数値シミュレーション結果を用いて、竜巻の発生機構を明らかにし論文としてまとめている。また、この解析結果から、フック状の降水物質の先端付近に位置する降水コアの落下が竜巻発生の前兆現象となる可能性を指摘している。地上データを用いた突風の統計解析については、全国の気象官署過去15年分の突風抽出作業が完了している。
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今後の研究の推進方策 |
数値シミュレーションの結果に基づいて前年度までに明らかになったスーパーセル竜巻発生の前兆現象と考えられるフック先端における降水物質の落下について、これまでに発生した竜巻に対してどの程度気象研究所の二重偏波レーダーで捉えられているのか調査し、発生機構を考察する。また、降水コアの落下をレーダーで観測する場合、どの程度の空間分解能と時間間隔で観測するのが理想的であるか、高解像度シミュレーション結果から評価を行う。 米国で近年用いられ始めている高解像度モデル用の竜巻発生ポテンシャル予測指数であるアップドラフトヘリシティについて、前年までに作成した地上データを用いた突風事例や気象庁竜巻等突風データベースの代表例を用いて、日本において適用可能かを調査する。また、本研究で明らかになったスーパーセル竜巻の構造や発生メカニズムをもとに、適切な改良を試みる。 前年までに作成した1分値と10秒値の地上気象データを用いて突風事例について、気象学的な特徴を統計的に調査する。 これまでの研究のとりまとめを行い、得られた結果を国内外の学会などの研究会議で発表するとともに論文等学術誌にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入したストレージ装置は、来年以降も保守費用等が必要なため、その分を繰り越しているため。海外旅費が想定よりも安価に済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入したストレージの保守費用等に使用する。 成果発表のための出張旅費に使用する。
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