研究課題/領域番号 |
15K05296
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
宮崎 和幸 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 主任研究員 (30435838)
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研究分担者 |
弓本 桂也 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (50607786)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | データ同化 / オゾン / 窒素酸化物 / 一酸化炭素 / 化学輸送モデル |
研究実績の概要 |
データ同化による大気組成濃度・排出量の推定精度に対して同化手法・衛星データの選択・取り扱いのみならず、予報モデルの性能が影響を及ぼす。しかしながら、様々な技術的な制約によりこれまでの研究ではその影響は明らかにされていない。本研究では異なるモデルに実装可能な最先端のデータ同化スキームを3つの化学輸送モデルに適用し、予報モデル性能が大気組成データ同化解析に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために、本年度は以下の研究に取り組んだ。 1. データ同化スキームの高度化:高精度なデータ同化解析のためにはデータ同化の基本的技術の改良が重要である。これまでに大気組成に特化したデータ同化スキームを独自に開発してきているが、更なるスキームの高度化を図った。具体的には、リトリーバル原理に基づく高度な観測演算子を開発し、最新の衛星観測観測情報を適切に同化可能とした。また、観測データの品質管理手法についても見直した。 2. 解析化学種の拡張:これまでの研究では、オゾン・窒素酸化物・一酸化炭素を主な解析対象としてきた。本研究では、それらに加えてホルムアルデヒド観測情報を同化対象にできるかについて検討を行った。 3. 複数の化学輸送モデルに同一のデータ同化スキームを導入する作業に着手した。CHASERに加えて成層圏の化学過程を含むMIROC-Chemに対して導入を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、1. データ同化スキームの高度化を実現し、2. 解析化学種の拡張に向けた考察を実施し、3. 2つの化学輸送モデルに同一のデータ同化スキームを導入する作業を完了した。当初本年度の作業として計画していた米国で開発されている化学輸送モデルに対する導入作業は完了していないが、導入に向けた検討を進めている段階にあり、全体として研究は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
3つの異なる化学輸送モデルへの同一データ同化モジュールの導入を進めそれぞれのデータセットを用いて過去10年間の長期計算を実施する。再解析計算結果は、衛星・航空機・ゾンデ・地上観測と比較し、濃度の水平・鉛直分布の季節・経年変動を、全球の地表から下部成層圏について、再現性を比較・検証する。排出量の推定値は先行研究による値と比較し、本研究による変更点を明らかにする。同時に観測網に関する考察に取り組む。既存の観測網による情報は特定の領域・高度で不足している。今後の実施が期待される観測の中でも宇宙ステーションと静止衛星からの観測に着目し、3つの異なるモデルを用いて観測システムシミュレーション実験(OSSE)を実施する。OSSEでは想定される真の大気の状態と解析を比較し、想定した観測が大気環境解析に及ぼす影響を調査する。実験結果をもとに今後の実際の観測計画に活かすべく議論を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
スケージュルに変更があり国際研究集会への参加を取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には研究成果を多く公表できることが期待できるため、国際学会参加のための旅費と国際雑誌への投稿料等に使用する。
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