研究課題/領域番号 |
15K05305
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
佐藤 夏雄 国立極地研究所, 名誉教授 (50132709)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | オーロラ / オメガバンド / 脈動オーロラ / 全天カメラ / 磁気圏 / 電離圏 / THEMIS / 極域 |
研究実績の概要 |
本研究は脈動オーロラ固有の基本的な特性である、準周期的な強度変調と特有な形状の生成要因を解き明かすことを最終目標としている。この目的を達成するために、脈動オーロラをタイプに分けて精査・比較する手法を用いる。タイプ別けする理由は、同じ脈動オーロラであっても、その生成の物理機構が異なっていることが予測されるからである。 本研究の具体的な進め方として、平成28年度は、北米大陸の地上からの全天カメラ網で観測されたギリシャ文字のオメガ(Ω)に似た形状をしたオメガバンドオーロラの発生特性のダイナミクスと統計特性に注目して解析を行った。このオーロラの内部には強い脈動オーロラが含まれている。2007年から8年分のデータを用いて315例のオメガバンドオーロラを抽出した。そのオーロラのデータ解析から以下の事実を明らかにできた。オメガバンドオーロラは形状の違いからを3つのタイプに分けることができ、その発生頻度を統計的に明らかにできた。さらに、オーロラの動画データを用いてオメガバンドオーロラの発生から消滅までのダイナミクスも明らかにできた。その特徴は、小規模の極方向に飛び出した「こぶ状」オーロラが時間とともに大きく成長してオメガ(Ω)に似た形状になり、東向き方向に400-500m/秒の速度でドリフトする。そして、15-20分後には形状が破壊される。統計特性としては、発生時間、季節変化、年変化、継続時間、地磁気活動との関係、太陽風パラメータとの関係も明らかにできた。これらの研究結果は国内外の学会やシンポジウムで発表し、学会誌にも投稿した(査読中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出来る限り多くのオメガバンドオーロラのイベント例を用い、オーロラの発生から成長、減衰するまでのダイナミクスの特性を明らかにすることともに、発生の統計的特性を明らかにすることを目標に研究を進めて来た。具体的な方法と結果は以下の通りである。オメガバンドオーロラのイベントは、8年間のカナダ・北米域でのTHEMIS地上全天カメラ網で得られているオーロラのサマリープロットを用いて、計315例を抽出できた。オーロラの動態・形態のダイナミクスを明らかにするために全てのイベントの動画を作成した。動画解析から、オメガオーロラの発生期から成長期、そして減衰期までの特徴を明らかにできた。特に、極方向に張り出した小規模の「こぶ」状の領域が3~5分間ほどで大きさが数百キロメートルになるほど成長するが、10~15分後には減衰期になり、その形状が崩れて消滅してゆく、ことが明らかになった。また、オーロラの形状が3タイプに分けられることも明らかにできた。一般的な発生特性を知る目的で統計解析を行った。明らかになった顕著な特性としては、発生時間帯が主に01-03 MLTであり、2月と3月に多く、Kp指数が3~4、AEが300~700nT、SYM-Hがマイナス10~40nTであった。IMFとの関係ではBzがマイナスの時とByがプラスの時に、太陽風速度が300~600km/secの時に発生頻度が高かった。オーロラのドリフト速度は東向きに300~500m/sec、視野内の存続時間が15~25sec、そして、出現の繰り返し間隔が10~30secであるイベントが多かった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、東西方向に千キロメートル以上延びたアーク状オーロラが2分~10分の周期で極方向に伝搬しながら明滅を繰り返すPc 5オーロラ脈動現象に注目して解析を進める。これまで行った初期解析によれば、オーロラの発生領域は脈動オーロラ領域のすぐ高緯度側であり、真夜中から朝方にかけて起こっている。このPc 5オーロラ脈動現象の発生特性の詳細と発生機構を明らかにするために、個別イベントの詳細解析とともに統計解析も行う予定である。(1)統計的な解析としては、8年分のTHEMIS地上全天カメラネットワークデータを用いて、オーロラ発生時の地磁気地方時、地磁気活動依存性、太陽風パラメータとの関係、などを行う。 (2)個別イベント研究としては、THEMIS衛星との同時観測イベントに注目し、電場、磁場、粒子データなど変調機構に直接関係する物理情報を得る。さらに、SuperDARNレーダーなどを用いてPc 5オーロラ脈動現象の発生・発達時の電離圏電場と地上磁場変動との関係や昭和基地-アイスランド共役点データを用いてオーロラの共役性なども明らかにしたい。得られた成果は国内外の学会やシンポジウム等で発表するとともに、学会誌等にも投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りに使用できたが、小額の端数がでた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、6月にイタリアで開催される2017 SuprerDARM Wororkshopと10月に京都で開催される地球電磁気・地球惑星圏学会秋期学会に参加して研究成果を発表する計画である。また、学会誌にも研究成果を投稿する予定である。集積したデータベースは外部メモリーに保存し、データ解析のソフトウェアも整備する計画である。
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