研究課題
現世付加体および白亜紀付加体において観察される地震性断層が,ジュラ紀やペルム紀などの,より古い付加体にも存在する可能性は十分に有り,そうした過去の地震性断層が,どのような性状・特性を持つのか,地震性断層が付加作用において普遍的現象であるのか,継続する付加過程でどのような時期に発達するのか,と言った長い地質時代の観点での検討も今後必要と考えられる.陸上の過去の付加体における断層岩の性状をはじめ,古地温構造や断層岩近傍での温度特性などのデータを提供することができれば,現世付加体に見られる地震性断層の過去のアナログデータを提供することができる.特にジュラ紀付加体は,海山期限の石灰岩や緑色岩が多数付加している事を特徴としており,これは白亜紀付加体の四万十帯とは対照的特徴を有している.このような観点から,栃木県に分布する足尾帯の内帯ジュラ紀付加体における石灰岩採石場内を中心として,海山起源の緑色岩-石灰岩相とチャート-砕屑岩相の間に発達する境界断層を精査した.H27年度の両岩相を境する境界断層の断層性状の観察や運動像の解析に加えて,H28年度は境界断層を挟んで,海山起源の緑色岩-石灰岩相とチャート-砕屑岩相,それぞれの古地温構造について,イライト結晶度および炭質物のレーザーラマンスペクトル測定を試みた.さらに,ジルコンFTによる断層の活動時期の検討のための砂岩試料のパイロットサンプリング等を行い,ジルコンFT砂岩試料の選定を行った.
2: おおむね順調に進展している
境界断層と層序断面を跨ぐ縦走する断面線に沿って,泥質岩や砂質岩を採取し,イライト結晶度および炭質物のレーザーラマンスペクトル測定による緑色岩-石灰岩相とチャート-砕屑岩相の古地温構造の検討を試みた.また層序を明確にした砂岩層について,その数地点で随伴する泥質岩から放散虫化石による微化石年代の検討を行い,ジルコンFT砂岩試料の選定を行うことができた.
H28年度の検証により,微化石によって堆積年代がある程度特定できた砂岩試料に絞って,ジルコンFTを測定を行って行く.また,断層岩の産状,内部組織,上盤・下盤の古地温構造,などを参考に,検討セクションを選定し,断層岩の摩擦発熱の可能性を検討する.断層岩近傍の砕屑岩および泥質岩試料のラマン分光測定によって,熱異常などの検討を行う.これらの踏査・測定結果(断層岩の産状,断層岩の内部組織,上盤・下盤の古地温構造,摩擦発熱の有無,ジルコンFT)から,境界断層のジュラ紀付加体内部での位置づけ,地震性断層としての特性,変位量,活動時期の特定,について総括・検討していく.
計画当初,砂岩中のジルコンFT年代測定は,H28年度中に行う予定でいたが,随伴する泥質岩の微化石年代が十分に判定できない試料があったことから,追加採取および追加処理を行ったために,最終的にジルコンFT用の試料の準備に時間が掛かってしまった.
追加採取および追加処理を行ったために,ジルコンFT用の試料の準備に時間が掛かってしまったが,計画内容に変更は無い.当初予定していたジルコンFT試料数を準備することができたので,予定通りに外注測定する.
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Revue de Micropaleontologie
巻: 59 ページ: 347-358
doi.org/10.1016/j.revmic.2016.08.002