現世付加体や白亜紀付加体において観察される地震性断層が,陸上に露出するより古い付加体にも見出される可能性は十分に考えられる.そうした古期の地震性断層が,どのような性状と特性を持つのか,地震性断層が付加作用における普遍的な現象であるのかなど,長い地質時代の観点での検証も今後必要と推察される.陸上付加体において,断層岩の性状をはじめ,古地温構造や断層近傍での温度特性などのデータを提供できれば,現世付加体に見られる地震性断層の過去のアナログを提供するものであり,地震性断層の理解の深化に寄与することが期待される.特にジュラ紀付加体は,白亜紀付加体とは対照的に,海山起源の石灰岩や緑色岩が多数付加していること特徴としている.そのような付加体において断層岩の分布や性状を明らかにすることは,現世付加体におけるアスペリティーと予測されている沈み込んだ海山のアナログを提供すると期待される.このような観点から,栃木県佐野市において,石灰岩採石高山を中心に踏査を行うことで,ジュラ紀付加体の海山起源の構成岩(石灰岩と緑色岩)と,砕屑岩類の境界断層について検討した.石灰岩相とチャートー砕屑岩相の境界を重点的に踏査し,断層岩の産出を確認するとともに,その産状記載を行った.また断層の運動像と活動時期をを検討するために周辺での古地温構造の検証を,さらに最終年度はジルコンのU-Pb年代やフィッショントラック年代などの検討を行った.
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