研究課題/領域番号 |
15K05308
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
藤本 光一郎 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80181395)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中央構造線 / 断層ガウジ / 粘土鉱物 / 粘性 |
研究実績の概要 |
本研究は,天然の断層破砕帯の野外観察や物質解析と実験的検討による破砕帯物質の反応や変化の速度評価を組み合わせ,断層破砕帯の物質変化を地震サイクルとの関係で把握することを目的としている. 野外観察としては,三重県松阪市の中央構造線の物質境界の断層露頭の解析を実施し,記載を行い,断層岩の分布や構成鉱物を解析した.その結果,物質境界にはガウジを挟まずに密着していること,物質境界から上盤20m以上にわたってイライト化を強く受けたカタクレーサイト帯が分布し,それより離れた場所ではブドウ石や濁沸石など200℃程度の温度を示すマイロナイトや弱変形花崗岩が分布していることが分かった.一方,下盤側の三波川変成帯では,物質境界より20m離れて物質境界とほぼ平行な断層ガウジ帯が見られた.このような観察を詳細に行い,近傍の露頭や掘削試料との比較を行うことで,中央構造線の深部の地震発生領域の状態がより明確になることが期待される. 実験的検討としては,粘土鉱物の物性測定を行うためのレオメーターを導入し,そのセットアップを行った.月布産のスメクタイト(日本粘土学会標準粘土試料JCSS-3101)について,含水を変えて粘性の比較を行った.含水比(自然乾燥させた粘土鉱物に対しての水の重量%)が200%と2000%の2種類で実験を行った結果,含水比が2000%の場合が2桁程度粘性が低いことが確認された.200%の場合は降伏強度があり,摩擦挙動的な側面が見られた野に対し,2000%になるとほぼ粘性流体としての挙動することが確認できた.スメクタイトのコンシステンシーを考えるとほぼ妥当な結果で,今後の実験の基礎を確立することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外研究としては,基礎的な記載がほぼ完了し,正確な断層岩分布や断層の姿勢などが確認されたので概ね順調といえる. 実験的研究としては,試験装置を購入し,セットアップを行った.また,試験に用いる鉱物や含水比などの検討を行い,次年度からの本格実験に備えができたので概ね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
野外研究では粘土鉱物の詳細な解析をX線回折や赤外吸収,示差熱分析などを通じて行うとともに,電子顕微鏡で粘度粒子の形態や破砕のされ方などを検討する. 実験研究では,粘土鉱物の種類と含水比を変えて粘性変化を見るとともに,それによる粘土鉱物のファブリック変化なども観察する. さらに地震サイクルとの関連で,すべり時の粉砕破壊と地震の間の静穏期でどの程度粘土粒子が変化するのか,従来の実験結果などを比較する.
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度購入予定の実験解析ソフトの価格が当初予定より上昇し,来年度の予定額では不足が見込まれるため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額189078円を含めてレオメータの実験解析ソフトを購入し,実験解析の効率化を図る.
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