研究実績の概要 |
・中期中新世の重要な年代指標種である浮遊性有孔虫Paragloborotalia siakensisについて,約16~11Maに至る長期間のサイズ変動記録を明らかにした.解析した地点は東赤道太平洋の近接した2地点における深海掘削コア(IODP Site U1337, U1338)である.これら2地点では天文軌道要素校正による詳細な年代決定がされており,この2地点の詳細対比によって意図しないバイアスシグナル(人為的もしくは局所的要因による擾乱)の評価が可能になると考えた.各層準のサイズ分布を代表させるため,各試料50個体以上のサイズを測定した.また,サイズ変動に伴う殻成長パターンを考察するため,X線CTスキャナーによる内部構造観察を一部の個体に対し用いた. 得られた2地点のサイズ変動パターンは非常に類似しており,サイズ変動による対比の可能性が示された.海洋環境の変化と比較すると,東部南極氷床の拡大イベントの最初期で顕著に小型化し,直後に急回復するという変動が観察された.この小型化層準についてX線CTスキャナーによって個体の成熟度を判別した結果,これら小型個体はいずれも成体であると判断された.また,Matsui et al. (2017)により指摘された赤道太平洋における東西対立の強化(”ラニーニャ”的環境の強化)に伴い,サイズ分布の顕著な大型化が認められた.これは海洋の富栄養化に対する応答と考えられ,これまで進化モデルの文脈から議論されてきたdwarfingやgigantismのメカニズムとは異なるものと考えられる.以上の結果は学会発表し,また論文準備中である. ・本研究で用いたサイズ測定システムを適用し,底生有孔虫BurseolinaやAmphisteginaのサイズ分布の研究も実施した.前者はタフォノミーの観点で,後者は個体群動態の観点で考察し,それぞれ成果を学会発表した.
|