研究課題/領域番号 |
15K05312
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
亀井 淳志 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60379691)
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研究分担者 |
柴田 知之 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40332720)
大和田 正明 山口大学, 理工学研究科, 教授 (50213905)
外田 智千 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60370095)
小山内 康人 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (80183771)
高須 晃 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00183848)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高Kアダカイト / 閃長岩 / 超大陸分裂 / ゴンドワナ / 原生代末 / 南極 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は南極セール・ロンダーネ山地に産する「原生代末のゴンドワナ超大陸分裂開始時に活動した高Kアダカイト-閃長岩複合岩体」のマグマプロセスを解析し,この活動の意義を明確にすることである.一方別視点では,各地で報告される大陸内型の高Kアダカイトの本質的な特徴(すなわち海洋地殻起源の低Kアダカイトとの相違点)を抽出することも行う.初年度では大陸型高Kアダカイトおよび閃長岩の地質情報(岩相区分・貫入史)の整理,岩石記載,および蛍光X線全岩分析を実施した.これらの結果,高Kアダカイトには高Al2O3,高Na2O,高Sr/Y,低Yといった海洋地殻起源のアダカイトと同様の特徴が認められる一方で,約5wt%以上のK2O量があり,さらにRb含有量が100ppmを超えて火山弧型の活動ではないなど,海洋地殻起源アダカイトとは大きく異なる性質が確認された.高Kアダカイトの構成岩を地質情報および岩石記載から,粗粒花崗岩,灰色花崗岩,細粒花崗岩の3岩相に区分した.粗粒花崗岩と灰色花崗岩は野外で閃長岩と同時活動した様子が岩体の広い範囲にあり,今回の詳しい薄片観察でもマグマ混合が確認された.一方,細粒花崗岩には野外・鏡下ともに混合は認められなかった.全岩組成では,これら3岩相の組成が連続変化しないことが分かった.これは閃長岩と様々な程度に混合した(粗粒花崗岩,灰色花崗岩),もしくは混合していない(細粒花崗岩)という野外および鏡下の結果と矛盾しない.これらから,高Kアダカイト-閃長岩複合岩体は大陸内活動の産物であることが明確で,活動時期が近接していると判明した(ただし,細粒花崗岩のみやや遅れて貫入).高Kアダカイトの成因解明には混合を免れた細粒花崗岩の解析が重要と予測される.次段階のREE分析や同位体分析で更に詳細検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地質情報(岩相・貫入史)の整理に加え,調査時に採取した全試料(約100試料)の顕微鏡観察および全岩分析を計画通りに実施できた.全岩分析では岩石粉砕装置を新期導入し,迅速に処理が完了した.地質・岩石記載・全岩組成のデータから,高Kアダカイト-閃長岩複合岩体の活動について,分化・混合の有無を把握するに至った.また高Kアダカイトと閃長岩の年代測定試料も選定できた.これらから,順調に進んでいると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
28年度ではREE組成を含めた微量成分の解析を行い,さらに同位体分析に入る.これらのデータから高Kアダカイト-閃長岩複合岩体の詳細な成因(マグマ生成~固結)の過程を解明する.この時点で,大陸内型の高Kアダカイトと海洋地殻起源の低Kアダカイトの本質的な違いがある程度整理できると考えている.29年度では年代測定と鉱物分析を含めた補足分析作業を行いつつ,超大陸の分裂時における複合岩体の火成活動の仕組みを明らかとし,世界各地で報告されはじめた高Kアダカイト-閃長岩複合岩体の火成活動の意義を明確にする.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通りに研究を実施したが,使用予定額に達しなかった.しかし,残予算額は当初予定額の2%であり,98%は使用している.この観点から,ほぼ計画通りの予算執行であったと考えている.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において残額を含めた予算執行を予定している.金額的には僅かな残額ではあるかも知れないが有効に活用する.
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