研究課題
本研究は,南極セール・ロンダーネ山地に位置し,原生代末ゴンドワナ超大陸分裂開始時に活動した高Kアダカイト-閃長岩複合岩体のマグマ活動とその意義の解明を目的とした.初年度~次年度では岩石記載と岩石化学組成を基に高Kアダカイトが3タイプのマグマ活動(粗粒花崗岩,灰色花崗岩,細粒花崗岩)によることを示し,粗粒花崗岩および灰色花崗岩は同時活動する閃長岩とミングリングして化学的に20%程度の閃長岩成分を混合したこと,細粒花崗岩はミングリングの影響が認められず初生マグマの組成を維持していることを示した.さらに初生マグマの性質を維持する細粒花崗岩の同位体組成と微量元素を用いたモデル解析を行い,高Kアダカイト質マグマは厚い地殻の底部をなす苦鉄質岩石が2GPa程度の高圧下で約10%融解して生じたことを示した.最終年度ではSHRIMPを用いたジルコンのU-Pb年代測定を主目的とし,高Kアダカイト質花崗岩と閃長岩の活動時期の決定を行った.その結果,高Kアダカイトおよび閃長岩より約550Maの活動年代を得た.さらに,過去2年間進めてきた複合岩体の岩相区分の検証およびマグマ混合モデル・部分融解モデルの精密化を目的として,岩石化学分析,REE分析,Sr/Nd/Pb同位体分析による補足データを獲得し,これまでの成果を補強する良好な結果を得た.最後に,これらの総括として,複合岩体の成因論に基づく高Kアダカイト-閃長岩火成活動の地質学的意義を検討した.その結果,もともと火山弧として形成した基盤岩が超大陸形成時に接合・地殻厚化し,ここが再び分裂を開始する際の熱いマントル上昇でこの火成活動がもたらされたと理解できた.すなわち,超大陸形成時に火山弧衝突した部分が再分裂を起こす場合に最初に見られる火成活動としての意義を有すると理解できた.
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (17件)
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