研究課題/領域番号 |
15K05313
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宇野 康司 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10510745)
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研究分担者 |
古川 邦之 愛知大学, 経営学部, 准教授 (20440620)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 古地磁気学 / 岩石磁気学 / 火山学 / 流紋岩 / 残留磁化方向 / 磁化率異方性 |
研究実績の概要 |
阿蘇に分布する高野尾羽根流紋岩溶岩(厚さ約100 m)について,溶岩内部の磁化情報を歪める要因になることが期待されるhigh porosity zone(HPZ, Furukawa and Uno, 2015により提唱)についての記述を行った。その結果をもとに,磁化率異方性(AMS)との関係を議論した。 HPZは,流紋岩の肉眼観察では白色流理として認識される部分であり,空隙率が40~50%程度に達する部分である。高野尾羽根流紋岩溶岩では,給源から比較的離れた(340 m)位置において顕著な発達が確認されている。 AMSの空間構造は,HPZの空間構造に支配されることが明らかとなった。この流紋岩は,最上部から約60 mまでの区間においては流理構造の傾斜が大きく,それ以下の深度では流理構造の傾斜が水平に近くなる。一方,AMSの長軸と中間軸がつくる平面により定義されるfoliationの傾斜も,最上部から約60 mまでの区間においては傾斜が大きく,それ以下の深度では傾斜が水平に近くなっている。流理構造およびfoliationの傾斜角度の値は,深度によっては,互いに一致していることが観察された。 AMSの主軸の姿勢について,最上部から約60 mまでの区間においては,長軸がfoliationの最大傾斜方向に対して直交している。すなわち,水平を保っていることで特徴づけられる。また,それ以下の深度においては,長軸も中間軸もfoliationの面内の任意の方向を有していた。上位層準におけるAMS主軸の並びの原因を検証するため,定方位薄片を用いたマイクロライトの配列の観察を行った。薄片観察の結果,マイクロライトはAMS長軸と同一の方向を示していた。この観察より,AMSの空間構造はマイクロライトの配列,またはマイクロライトの配列をもたらす流動・破壊現象によって支配されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,流紋岩の磁化情報を歪める地質学的要因を定義する研究について進歩を得た。今回の定義により,一枚の厚い流紋岩溶岩の組織について高さ方向および水平方向の変化を一定の尺度により捉えることができ,流紋岩溶岩の発達過程を三次元的に捉えることを可能にした。今年度は阿蘇の流紋岩溶岩を主たる研究対象とした。その理由としては本地域の流紋岩はその上端から下端までをボーリングコアが貫いているため,その試料を用いることで上下方向の組織・磁性の変化を記述するのに適しているからである。また,給源から距離の異なる4本のボーリングコアが存在するため,水平方向の組織・磁性の変化についても記述が可能であるためである。今年度は,その4地点のうち最もHPZが発達する地点を研究対象とした。今回の研究では,少なくともHPZが明瞭に発達する地点においては,その構造に対してAMSの空間構造が支配されることを明らかにできた為,研究計画はほぼ達成された。
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今後の研究の推進方策 |
HPZが発達する地点では,その姿勢に対してAMSが顕著に影響を受けることが明らかとなった。今後,HPZが未発達な地点のコア試料でも同様の検討を行うことにより,HPZの発達度合に対するAMSへの影響を記述することが可能となる。流紋岩溶岩の内部構造とその自然残留磁化方向との関係についての考察は,これまでに十分な基礎データが集められている阿蘇の流紋岩から検討を始めたい。 研究対象として神津島の流紋岩を加えることを検討している。この地域の流紋岩は内部構造の鉛直変化を露頭において観察することが可能であるため,これまでのボーリングコアを利用した研究で得られる情報に加えて,磁性についての水平面内における変化を議論することが可能となる。神津島溶岩の研究についても,阿蘇の溶岩研究のプロセスと同様に,まず流紋岩の磁化率異方性測定とその議論を実施したい。それに並行して,神津島溶岩の内部構造や組織の記載について露頭観察および顕微鏡観察により詳細に行う予定である。 磁性に関するデータ取得は岡山大学で行い,顕微鏡観察は愛知大学と岡山大学で行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
適切な補助金使用の結果,当初予想したより地質調査用品が安く購入することができ,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については,地質調査用品にあてることで適切に使用したい。
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