研究課題/領域番号 |
15K05314
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
今岡 照喜 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30193668)
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研究分担者 |
君波 和雄 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (20127757)
永嶌 真理子 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (80580274)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 白亜紀 / 火成活動 / アジア大陸 / カルデラ / 流紋岩 |
研究実績の概要 |
西南日本の白亜紀のイグニンブライト・フレアーアップの開始時期と継続期間、またそれに関係する白亜紀火成活動の時空分布・岩石学・地球化学的特性の解明を目指してきた。その目的達成のために系統的なジルコンU-Pb年代の測定を進めている。その一環として測定した山口県中央部に位置する生雲コールドロンでは、カルデラを埋積する最下部の流紋岩、最上部の流紋岩、さらにそれらを貫く珪長質貫入岩のいずれも誤差範囲で一致する95 Maの年代を示した。カルデラ内には何枚もの湖成層がみられ、火成活動の休止期が推定される。しかし年代測定結果は、このコールドロンにおける火成活動の継続時間は100万年以内のU-Pb年代の誤差範囲内であることを示している。 また、山口県美祢市於福地域に分布する於福プルトンの岩石学・年代学・地球化学が明らかとなり、鉱化作用との関連も明らかとなった(Sasaki et al., 2016)。於福プルトンは約100 MaのK-Ar年代を示し、同様の年代をもつ火成岩類は山陽帯において東西方向に分布しており、山口県東部では岩国周辺でも認められる。このことは、100Ma火成岩の帯状分布を示す。 さらに山口県蓋井島にはマグマ混交・混合現象を示す見事な露頭が海岸沿いに見られる。そこで、蓋井島花崗岩に記録されたマグマ混交・混合現象について論文をまとめた(今岡ほか、2015)。ここでは複数回のマグマ混交・混合現象が明らかとなるとともに、石英閃緑岩中に垂直にのびた花崗岩パイプが見出された。このパイプは、より苦鉄質なマグマにトラップされた低密度・低粘性の花崗岩マグマの小球状体が重力不安定のためにダイアピル状に上昇してきたものであると解釈された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた年代測定に関しては、年代測定試料となるジルコンの抽出は全て終了している。さらに一部の試料(生雲コールドロン)については年代測定が終了している。2016年度には測定が終了する見込みである。さらに当該年度に掲載を予定していなかった於福プルトンの論文をResource Geologyに、蓋井島の論文を地質技術に公表することができた。さらに2016年にイギリスのGeological Societyから刊行された"Geology of Japan"の中で、日本列島の花崗岩について概観することができた。
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今後の研究の推進方策 |
イグニンブライト・フレアーアップの開始時期と継続期間の解明を目指して、分離したジルコンのU-Pb年代測定を進める。更に長門市青海島を中心に後期白亜紀の長門-豊北グラーベンカルデラの地質、岩石記載、年代、地球化学的特性について論文化を進める。 さらに白亜紀の水平沈み込みからロールバックへの変換過程で生じたと考えられる特異なアルカリ交代作用が明らかとなりつつある。これについては当初計画の段階では認識できていなかったが、重要な意味をもつと考えられるので、まずは岩石学・鉱物学の観点から研究を推進していく考えである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に純粋製造装置のイオン交換樹脂を交換の予定であったが、樹脂が予想外に長持ちしたことと、野外調査の日数が予定より少なかったために生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
イグニンブライト・フレアアップに関する論文をまとめるにあたって必要となるデータを補完するための野外調査の旅費として使用する。
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