前年度までの研究成果によって、波浪営力と砂の形状には弱い相関しか検知されないという課題が存在することが明らかになった。そこで、前浜堆積物の形状は、海水営力のみならず、大気営力による影響も被っていると考えて、論理展開の軌道修正を図った。すなわち、波浪営力と風成営力を、粒子形状決定の説明変数として設定した。 この結果、粒子の伸張度指標は有義波高と相関があり、円摩度指標は平均風速と相関があることが分かった。すなわち、粒子の巨視的な形状は波浪営力によって、微視的な表面構造は風成営力によって決定されていたことがわかった。 この成果を踏まえて、形状指標(REF1・SEF)とフェッチ(地形)・平均風速・平均有義波高・うねりの出現率の主成分分析をおこなった。第1主成分は波浪営力を検出し、伸張指標と高い相関を示した。また、太平洋側の海岸は正の値、日本海側の海岸は負の値を示した。したがって、この潜在変数は、うねりの多い大海洋に面した海岸では、砂粒子が円形になることを示している。第2主成分は風成営力を検出し、円摩度指標と高い相関を示した。また、浜堤平野が発達している海岸でのみ高い負の値を示した。したがって、この潜在変数は、砂丘の発達度合いを検知しており、砂丘が発達している場所では粒子が円摩されていることを示している。今回の主成分分析結果を応用すれば、対象海岸が大きな海洋に面しているか否かと、砂丘の発達の有無を判別することができる。今後は、未知試料に対しても適応できるのかを検証する必要があり、この方法によって真に、粒子形状から海岸地形特性を推察できるのかを吟味する。
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