研究実績の概要 |
本研究は射流堆積物を実験水路で再現し,高周波のGPR(Gound Penetrating Radar: 地中レーダ)を用いて3次元解析を行い,地層や現世の洪水や津波堆積物への適用を検討するものである. 今年度は実験による津波に伴う射流堆積物についてGPR測定および剥ぎ取り断面資料の作成を行った.2016年度に行なわれた(一財)電力中央研究所の大型造波水路(水路長205m,幅60cm,深さ95cm)による津波実験では,水路途中に砂丘を作りその下流側に遡上する津波堆積物が形成された.この堆積物についての1.6Ghzの高周波アンテナを用いたGPR探査した.水路に平行な面での剥ぎ取り資料を取り,GPR反射面の堆積相の確認を行った.これらの結果からは砂丘前後に見える凹地は津波が砂丘に衝突した後の跳水による落掘と考えられた.また,津波堆積物は粒径の異なる二層(下部の細礫を含む粗粒砂層と上部の細粒砂層)からなり,これらの境界面が反射面となっていることが明らかになった. また,現世の津波堆積物の3次元的挙動を検討する基礎的資料として2011年3月11日東北地方太平洋沖地震の九十九里浜平野における観察事例(岡崎・大木,2012)との比較を行った.ここでは堤防を越える射流による洗掘とその後の埋積が起こり,アンティデューン層理の形成が見られた.これは3次元的な複合する流れによる形成されたと考えられた.今後は,洪水堆積物なども含めて現世や過去の射流に伴う堆積物と実験堆積物との比較検討によりその発生条件推定や堆積相モデルの構築を目指す. 岡崎浩子・大木淳一(2012)東北地方太平洋沖地震にともなう九十九里浜の津波堆積物と海岸地形変化調査報告.千葉中央博自然誌研究報告(自然), 12(1), 1-16.
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