研究実績の概要 |
北海道東部,野付湾周辺には,現在も活動的なバリアーシステムが認められており,野付崎バリアースピット(NBS)と呼ばれている.我々は,2015年以降,本科研費予算を用いて,NBSにおいて浜堤を横断する5本の測線を設定し,地形・地質調査を実施してきている. これまでの掘削調査により,上位から7層の完新世テフラ,Ta-a(1739 年)およびKo-c2(1694 年), B-Tm(929 年)およびMa-b(10 世紀),Ta-c(2.5 ka), Ma-d(4.0 ka),Ma-e(5.2 ka)が見いだされ,これらを時間面として,NBSの地形発達史を解読することが出来た. NBSが現在の位置に成立したのは,茶志骨の泥炭層基底の年代からMa-dを挟む泥炭層の存在から4000年より前と推定される.一方,最も若い砂嘴であるBS1 はTa-a, Ko-c2 に被覆されないことから,17 世紀以降に出現し現在荒浜岬を形成している.BS2 は江戸時代後期の通行屋遺跡を載せ,その標高は1.59mに達している.この浜堤はTa-a, Ko-c2 に直接被覆されることから,17 世紀に離水した可能性が高い.BS4はオンニクル付近のみ分布する.Ta-cに被覆され2652-2347 cal yr BPというAMS年代値を新たに得ていることから,約2500年前に離水した古い砂嘴の残骸と推定される.BS4の標高は2.66m以上に達している.野付半島ネーチャーセンターが立地するBS3 の離水年代は,Ta-a, Ko-c2と礫浜層との間に泥炭層を挟み,新たに767-683 cal BPという値を得ていることから,12~13 世紀と予測される.BS3の標高は2.47mに達している. 少なくともBS3よりも若い分岐砂嘴の出現には,千島海溝における広域な地震性地殻変動が関わっていた可能性が高いと考えられる.
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