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2016 年度 実施状況報告書

強制海退によって規定されたバリアースピットの堆積様式の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K05323
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

七山 太  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 上級主任研究員 (20357685)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード野付崎バリアースピッツ / 根室海峡沿岸域 / 完新世 / 地殻変動 / 千島海溝 / 海溝型地震 / 別海町 / 北海道
研究実績の概要

北海道東部,野付湾周辺には,現在も活動的なバリアーシステムが認められており,野付崎バリアースピット(NBS)と呼ばれている.我々は,2015年以降,本科研費予算を用いて,NBSにおいて浜堤を横断する5本の測線を設定し,地形・地質調査を実施してきている. これまでの掘削調査により,上位から7層の完新世テフラ,Ta-a(1739 年)およびKo-c2(1694 年), B-Tm(929 年)およびMa-b(10 世紀),Ta-c(2.5 ka), Ma-d(4.0 ka),Ma-e(5.2 ka)が見いだされ,これらを時間面として,NBSの地形発達史を解読することが出来た.
NBSが現在の位置に成立したのは,茶志骨の泥炭層基底の年代からMa-dを挟む泥炭層の存在から4000年より前と推定される.一方,最も若い砂嘴であるBS1 はTa-a, Ko-c2 に被覆されないことから,17 世紀以降に出現し現在荒浜岬を形成している.BS2 は江戸時代後期の通行屋遺跡を載せ,その標高は1.59mに達している.この浜堤はTa-a, Ko-c2 に直接被覆されることから,17 世紀に離水した可能性が高い.BS4はオンニクル付近のみ分布する.Ta-cに被覆され2652-2347 cal yr BPというAMS年代値を新たに得ていることから,約2500年前に離水した古い砂嘴の残骸と推定される.BS4の標高は2.66m以上に達している.野付半島ネーチャーセンターが立地するBS3 の離水年代は,Ta-a, Ko-c2と礫浜層との間に泥炭層を挟み,新たに767-683 cal BPという値を得ていることから,12~13 世紀と予測される.BS3の標高は2.47mに達している.
少なくともBS3よりも若い分岐砂嘴の出現には,千島海溝における広域な地震性地殻変動が関わっていた可能性が高いと考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度の調査で,重要な新知見が2件得られた.
(1)竜神崎灯台手前の駐車場脇の12C離水浜堤の年代値
海浜礫層直上の泥炭層をナイフで切り出して,浜堤の離水年代値を検討した.その結果,767-683 cal BPという値を得た.この年代値から,離水時期が当初の予想通り12/13Cであったことが確定できた.よって,この地では江戸時代の17C以前の鎌倉時代前にも大規模離水現象があったことが明確になった.
(2)オンニクルの森海岸露頭の離水浜堤の年代値
オンニクルの森海岸道路沿いにある大露頭において,海浜礫層直上の泥炭層を採取し,浜堤の離水年代値を検討した.その結果,2652-2347 cal BPという値を得た.昨秋の調査で,オンニクルの森奥の古砂丘間の湿原堆積物からTa-cテフラ(2500 cal yr BP)が発見されたことも含め,オンニクルの森の基盤を浜堤の離水時期は2500年前後と古いことが明確になった.

今後の研究の推進方策

今年度は3ヶ年計画の最終年度にあたり,これまでの現地地形地質情報の取りまとめと補足調査を行う.特に野付湾に散在する分岐砂嘴の断片である島々の上陸調査を,野付半島ネイチャーセンター,別海町教育委員会と漁協のサポートを受けて実施する運びとなっている.これまでの研究成果を,12月に開催されるAGU Fall Meetingで発表し,来年前半には英文国際誌に投稿する方向で調整を行う所存である.

次年度使用額が生じた理由

国際学会参加を検討していたが,体調不良のためやむなく断念した.

次年度使用額の使用計画

最終年度は,前年度繰り越した66,117円を旅費として組み入れ,AGU Fall Meeting等の国際学会での発表を実施したいと考えている.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 屋久島北東部,小瀬田海岸の完新世波食ベンチ上に認められる近世のイベント礫層の起源:予報2017

    • 著者名/発表者名
      中川正二郎・七山 太・佐々木洋之・面 将道・下司信夫・渡辺和明・岸本清行・成尾英仁・前野 深・奥野 充・小林哲夫
    • 雑誌名

      福岡大学理学集報

      巻: 47 ページ: 15-32

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 2017年1月,平成28 年台風10 号豪雨により北海道十勝地方で発生した大規模洪水および土砂災害(速報)2017

    • 著者名/発表者名
      七山 太・高橋 浩・重野聖之
    • 雑誌名

      GSJ地質ニュース

      巻: 6 ページ: 5-6

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 台風来襲時の高波と高潮の相互作用によって沿岸低地に生じた小規模な砂質イベント堆積物の堆積過程:1959年9月18日午前9時から19日午前1時の間に渡島半島西岸平浜海岸低地において生じた事例2016

    • 著者名/発表者名
      重野聖之・七山 太
    • 雑誌名

      地学雑誌

      巻: 125 ページ: 747-762

    • DOI

      10.5026/jgeography.125.747

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 野付半島から見た国後島の羅臼山とケラムイ崎2016

    • 著者名/発表者名
      七山 太
    • 雑誌名

      GSJ地質ニュース

      巻: 5 ページ: 0-0

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 海上に浮かぶ?野付半島の漁師番屋群2016

    • 著者名/発表者名
      七山 太・渡辺和明
    • 雑誌名

      GSJ地質ニュース

      巻: 5 ページ: 0-0

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 野付半島荒浜岬から撮影された根室湾の蜃気楼2016

    • 著者名/発表者名
      七山 太
    • 雑誌名

      GSJ地質ニュース

      巻: 5 ページ: 0-0

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] U A V によって撮影された根室半島先端の納沙布岬2016

    • 著者名/発表者名
      竹田浩章・猪熊樹人・七山 太
    • 雑誌名

      GSJ地質ニュース

      巻: 5 ページ: 0-0

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Seismotectonic control of the geomorphological evolution of Hashirikotan barrier spit, southern Kuril subduction zone2017

    • 著者名/発表者名
      Nanayama, F., Shigeno, K., Watanabe, K., Hasegawa, T., Uchida, Y., Ishiwata, K. and Ikeda, Y.
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2017
    • 発表場所
      幕張メッセ国際会議場
    • 年月日
      2017-05-25 – 2017-05-25
    • 国際学会
  • [学会発表] Evidence on the Koseda coast of Yakushima Island of a tsunami associated with the 7.3 ka Kikai caldera eruption2017

    • 著者名/発表者名
      Nanayama, F., Maeno, F., Nakagawa, S., Sasaki, Y., Omote, M., Watanabe, K. and Naruo, H.
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2017
    • 発表場所
      幕張メッセ国際会議場
    • 年月日
      2017-05-23 – 2017-05-23
    • 国際学会
  • [学会発表] Sedimentary process of a small sandy event deposit due to the storm surge and storm wave of a typhoon2017

    • 著者名/発表者名
      Shigeno, K. and Nanayama, F.
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2017
    • 発表場所
      幕張メッセ国際会議場
    • 年月日
      2017-05-20 – 2017-05-20
    • 国際学会
  • [学会発表] 火山噴火によって発生した津波と津波痕跡2017

    • 著者名/発表者名
      七山 太
    • 学会等名
      国際火山噴火史情報研究集会
    • 発表場所
      福岡大学
    • 年月日
      2017-01-22 – 2017-01-22
    • 招待講演
  • [学会発表] Geomorphological evolution of Notsukesaki barrier spits resulting from Holocene seismotectonics along the Southern Kuril Subduction Zone2016

    • 著者名/発表者名
      七山 太・渡辺和明・重野聖之・長谷川健・石渡一人・和田直人・小野哲也
    • 学会等名
      日本地質学会第123年学術大会
    • 発表場所
      日本大学文理学部
    • 年月日
      2016-09-11 – 2016-09-11
  • [図書] 東京地学協会助成ジオガイド叢書2 屋久島ジオガイド2016

    • 著者名/発表者名
      島津 弘・安間 了・七山 太・江口 卓・清水長生
    • 総ページ数
      102
    • 出版者
      山と渓谷社
  • [図書] 北海道自然探検 ジオサイト107の旅2016

    • 著者名/発表者名
      日本地質学会北海道支部 (監修)
    • 総ページ数
      360
    • 出版者
      北海道大学出版会

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公開日: 2018-01-16  

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