研究課題
平成27年度は,本研究の3つのテーマのうちの一つ「脊椎骨含気化の分析による獣脚類恐竜巨大化メカニズムの解明」を重点的に研究した。獣脚類恐竜は,肉食から植物食に食性を移行することで巨大化が進んだものと,走光性を進化させたものと,2つの異なった進化の道を選んだと仮説を立てた。どちらも,骨の含気化による軽量化が必要となる。今回対象にしたのは,獣脚類恐竜の中でも,植物食の進化を遂げたテリジノサウルス類とオルニトミモサウルス類である。27年度は,巨大化していないテリジノサウルス類(エルリコサウルス)と巨大化したもの(セグノサウルス)の含気化を解剖学的に観察し,定量的に測定した。また同じく,巨大化していないオルニトミモサウルス類(モンゴル産未記載種)の脊椎骨などの,含気化を解剖学的に観察し,定量的に測定した。巨大化したオルニトミモサウルス類(デイノケイルス)の観察は、次年度へと持ち越された。さらに,同じ植物食の獣脚類であるオヴィラプトロサウルス類も研究対象とした。まだ予察的ではあるが,含気化による軽量化は,かなり初期の段階で達成されていたが,含気化の範囲やパターンはそれぞれ異なっていることが観察された。同じ植物食という食性の表現だが,そのくちばしの形状や手や腕の機能が,種によって異なっていることがわかってきた。それぞれ異なったニッチを支配し,異なった戦略で巨大化を達成できた可能性がある。これらの成果は現在論文に向けて準備をしている。
2: おおむね順調に進展している
標本の調達に苦労しているところはあるが,現段階でアクセスできる標本を観察できており,順調に研究が進んでいる。当初の目的でもあるデイノケイルスの標本のアクセスが平成28年度からしやすくなるため,よりスムーズに研究が進むと考えている。
今後は,予定通り3つの研究のうちの残り2つに移行し,研究を進めていく。特に2番目の研究内容「クチバシを含む頭骨の植物食への適応と胃石の解析」へと研究の重点を移行する.この年度は,オルニトミモサウルス類の系統関係の再検討とクチバシの進化,ハドロサウルス科頭骨の観察と比較,胃石の分析といった3つが研究の内容になる.オルニトミモサウルス類の系統関係の再検討は,カナダとモンゴル,中国の標本を中心に行う.同時に,ハドロサウルス科の観察のため,モンゴル科学アカデミーとカナダ王立ティレル博物館への訪問が主になる.
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