研究課題/領域番号 |
15K05324
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 快次 北海道大学, 総合博物館, 准教授 (70400033)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 進化 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,本研究の3つのテーマのうちの一つ「クチバシを含む頭骨の植物食への適応と胃石の解析」を重点的に研究した。デイノケイルスの上下の顎には歯がなく退化している.これは,獣脚類の中でも何度か独自に収斂進化していることがわかっており,その代表的なグループがデイノケイルスを含むオルニトミモサウルス類である.本年度は,歯を失った獣脚類やその他の恐竜の標本観察し検証を行った.デイノケイルスのクチバシは,他の獣脚類とは全く異なり上下に潰れ横に広いクチバシを持っている.さらにこれまでに見られていないほど多くの神経孔が存在することから,大きな角質で覆われていたことがわかってきた.この上下に潰れ横に広いクチバシは,獣脚類とは全く異なった植物食の鳥脚類恐竜ハドロサウルス科に極端に類似していることがわかった.このことから,デイノケイルスは独自により特化したクチバシを獲得し繁栄できたことが明らかになった. 胃石の方は,その輪郭を統計的に分析した.データを収集し現生のワニ類や鳥類と比べたところ,植物食性であったことが判明した.胃の内容物として魚の骨があるが,胃石の分析魚食性である可能性は低い.これは,胃の内容物は一時的な食事を表しているだけであって,日常的な植生を表しているものではないということである.今後は,他の獣脚類の胃石データをさらに計測し,より多くのデータから検証を進めていく予定である. 現在,これらの結果を論文としてまとめているところである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで,デイノケイルスの標本が韓国にあり,研究の実施が困難な部分があったが,平成29年4月にモンゴルに返されたと報告があった.これにより,標本へのアクセスがしやすくなったため,来年度の研究課題である「帆を作っている神経棘の構造解析」の研究が潤滑に行くことを期待している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,予定通り3つの研究のうちの最後の1つに移行し,研究を進めていく。特に3番目の研究内容「帆を作っている神経棘の構造解析」へと研究の重点を移行する.この年度は,オルニトミモサウルス類の神経棘の検討を行う.また,オルニトミモサウルス類の系統関係の再検討は,カナダとモンゴル,中国の標本を中心に行う.同時に,ハドロサウルス科の観察のため,モンゴル科学アカデミーとカナダ王立ティレル博物館への訪問が主になる.
|