研究課題/領域番号 |
15K05326
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
高橋 修 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20242232)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放散虫 / 共生藻 / ハプト藻 / 渦鞭毛藻 / 遊走子 / ポリキスティネア / アカンサリア / 硫酸ストロンチウム |
研究実績の概要 |
東シナ海(琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設)での定点によるサンプリングを,本年度は季節を変えて3回行い,放散虫とそれに共生する藻類の特異性や多様性を,分子系統解析,微細構造観察などを通して網羅的に探索した.また,本調査のうち1回は,海外研究協力者のノルウェーオスロ大学のBjorklund教授を招いて共同調査を行った. これらの調査により,現時点で,東シナ海における放散虫について,それに共生する藻類の特異性と多様性が明らかになってきた.本年度はそのうちの,ハプト藻共生体についての検討をすすめ,宿主・共生体それぞれについて遺伝子解析および細胞微細構造観察を行ってきた.この放散虫の共生体として取り込まれているハプト藻は,今まで報告されていない新種であり,非常にユニークな形態および生態をもっていることが分かった.現在,国際学術雑誌に投稿するための論文を作成中である. また,放散虫の遊走子について,これまで,放散虫のうちのポリキスティナ3綱についての検討を行ってきたが,現時点で残った最後の大きな綱であるアカンサリア綱について,遊走子に関する新しい知見が得られてきた.たとえば,アカンサリア類の遊走子にも硫酸ストロンチウムの結晶が含まれ,ポリキスティナとほとんど同じ形態を持つことが分かってきた.これは,分子系統解析によりレタリアとして一括される放散虫類の近縁性を示すものと考えられる.最終年度にあたって,このアカンサリアの遊走子の形態観察,分子系統解析,微細構造観察を行う事を目標とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放散虫の培養が確立できていないため,cDNAの増幅や,シリカトランスポーテーションジーンの増幅などにはいまだ成功していない.しかし,放散虫に共生する共生藻の特異性や多様性を,分子系統解析,微細構造観察などを通して網羅的に探索したことにより,現時点で,東シナ海における放散虫については,共生する藻類の特異性と多様性がしだいに明らかになってきた.シアノバクテリアに続き,前年度は渦鞭毛藻の新種を報告し,現在はハプト藻についてのまとめを作成中である.この後も,いくつかの共生藻についての新種の報告ができるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに判明した共生の特異性が明らかになっているものだけについて,薬品による共生藻の排除後に,もともと入っていた共生藻を再び合わせ,取り込ませた藻類がどのような過程をへて再び共生状態へ移行するのかを探る.放散虫の細胞内に藻類がどのように取り込まれるのか(共生の確立),放散虫の細胞内で消化もされずにどうやって共生状態を維持しているのか(共生の維持),宿主の放散虫が死ぬ直前に藻類はどのような挙動を示すのか(共生の解除)などについて明らかにする.多様な共生体が宿主に入らないようなしくみが放散虫には存在すると考えられる.最初に入り込んだ共生体(藻)だけが分裂し,その他の藻類は消化される,その仕組みについても明らかにしたい. 放散虫の培養が確立できていないため,個体数の必要な,cDNAの増幅や,シリカトランスポーテーションジーンの増幅には課題が残っている.しかしながら,培養ができなくとも,リプロダクションの段階で無数の遊走子を採取できることから,このタイミングの遊走子のサンプルを得ることを試みていこうと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は,ノルウェー・オスロ大学のBjorklund教授との国際共同研究を行っている.本年度,ノルウェーへの調査研究旅費を計上していたのであるが,先方の実験所の状況などで渡航することができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定どおり,ノルウェー調査への渡航旅費として使用する予定である.
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